突然。
何の前触れもなく。
知らない世界へ放り込まれる。
数分後に帰れる保証もない。
数日帰れないこともある。
今回の資料は、そんな旅を何年も続けている男の記録です。

本日の資料はSCP-507。
通称「不本意な次元跳躍者」です。

異世界転生みたいな話?

本人はあまり楽しそうではありませんでした。
SCP概要
SCP-507は定期的に別の次元へ飛ばされてしまう男性です。
本人の意思とは関係なく発生し、突然姿を消したかと思えば、数時間後や数日後に戻ってきます。
その間に訪れた世界で見聞きしたことは、詳細な記録として残されています。
財団は彼を危険な存在というよりも、異世界から帰還してくる観測者として扱っています。

能力っていうか災難だな。

507本人も同じことを何度も訴えています。
突然始まる旅
SCP-507は特別な訓練を受けたエージェントではありません。
元は普通の一般人です。
しかしある日を境に、定期的に別世界へ飛ばされるようになりました。
予兆はありません。
準備する時間もありません。
気付けば知らない場所に立っている。
帰る方法も分からない。
ただ現地で生き延びながら、元の世界へ戻る瞬間を待つしかないのです。

嫌すぎるな……

だからこそ財団も彼の体験記録を重視しています。
誰もいない街
ある日、507が飛ばされたのは見慣れた都市でした。
道路がある。
信号も動いている。
店も開いている。
電気も通っている。
ですが。
誰もいませんでした。
車は残っている。
建物も残っている。
生活の痕跡も残っている。
それなのに人間だけがいない。
507は街を歩き回ります。
建物を調べます。
声を上げます。
ですが返事はありません。
数時間にわたる探索の末も、結局誰一人として発見できませんでした。

派手じゃないけど怖いな。

507も強い不安を感じたと記録しています。
世界中が肉だった
しかし507が訪れた世界の中には、もっと理解不能な場所もありました。
足元が妙に柔らかい。
壁が脈打っている。
建物が呼吸している。
最初は気のせいかと思いました。
ですが違いました。
地面も。
壁も。
建物も。
世界そのものが巨大な肉塊だったのです。
507は周囲のあらゆるものが生物組織で構成されていると記録しています。
理由は分かりません。
何のために存在する世界なのかも分かりません。
ただ一つ確かなのは、
507が心の底から元の世界へ帰りたがっていたことです。

帰る帰る帰る。

私も長居はしたくありません。
財団が敗北した世界
別の記録では、507は崩壊した施設を発見しています。
最初は何の施設なのか分かりませんでした。
ですが内部を調べるうちに異変に気付きます。
見覚えのある標識。
収容区画らしき設備。
そして財団職員の記録。
そこは財団施設でした。
しかし様子がおかしい。
設備は破壊されている。
警備システムは停止している。
職員の姿はない。
記録の一部には緊急事態を示す内容も残されていました。
507は施設内を調査します。
ですが生存者は発見できません。
何が起きたのか。
何が収容違反を引き起こしたのか。
人類はどうなったのか。
最後まで分かりませんでした。
ただ。
施設の状態だけは全てを物語っていました。
この世界では財団が負けた。
そして、その結果だけが残されていたのです。

こういうの嫌なんだよな……

答えが分からないまま終わる記録ほど、人は想像してしまうものです。
なぜ507は人気なのか
SCP-507の記事を読むと、つい異世界の方へ目が向きます。
誰もいない街。
肉の世界。
財団が敗北した世界。
どれも魅力的です。
ですが本当に面白いのは異世界ではありません。
507本人です。

本人?

ええ。
どれだけ意味不明な世界へ飛ばされても、彼は帰ってきます。
そして記録を残します。
また飛ばされても、また帰ってきます。
それを何年も繰り返しているのです。
SCP-507が本当に特別な理由
SCP-507は英雄ではありません。
世界を救う存在でもありません。
ただの被害者です。
それでも彼は帰ってきます。
そして記録を残します。
だから読者は異世界そのものではなく、
いつしか507という人物の方を気にするようになるのです。
次はどこへ飛ばされたのか。
無事に帰ってこられたのか。
その記録を追いたくなるのです。

異世界の話なのに、最後は507が気になるな。

それがこの記録の面白いところです。
まとめ
SCP-507は異世界を旅する男です。
ですが、その本質は異世界紹介ではありません。
突然知らない世界へ放り込まれ。
何が起きるかも分からないまま過ごし。
それでも帰ってくる。
SCP-507とは、終わる保証のない旅を続ける男の記録なのです。

今夜の記録はここまでです。
また次の資料でお会いしましょう。
出典
SCP-507 “Reluctant Dimension Hopper”
Author: Pair Of Ducks
Source:
https://scp-wiki.wikidot.com/scp-507
ライセンス
This work is licensed under Creative Commons Attribution-ShareAlike 3.0 License (CC BY-SA 3.0).

異世界って聞くと楽しそうなんだけどな。

肉の世界かもしれませんよ。

急に現実見せるな。



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