
12年に一度だけ出てくる怪物って、逆に対策しやすそうじゃない?

出てくる時期は、ある程度分かっています。

じゃあその期間だけ町から逃げればいいじゃん。

そう考えますよね。

……できないの?

少なくとも。この町では、長い間そうなりませんでした。
小さな町には。
外から来た人間には分からない。
決まりがあることがある。
あの場所には近づかない。
この時間には外へ出ない。
あの話はしない。
理由を尋ねても。
誰も詳しく説明しない。
ただ。
昔からそうだから。
それだけが。
答えとして残っている。
SCP Foundationで公開されている創作作品。
SCP-783「There Was A Crooked Man」。
舞台は。
イングランド、オックスフォードシャーの小さな集落。
テンビー。
そこには。
住民の多くが知っていながら。
公には語ろうとしない。
ひとつの存在がいた。
12年ごとに現れる、「曲がった男」。
12年に一度、約70日間だけ活動する
SCP-783は。
常に人を襲っているわけではない。
活動するのは。
およそ12年に一度。
秋から冬にかけて。
約70日間。
そして。
襲われる人間にも条件がある。
日没後。
屋内にいる。
そして、一人でいること。
標的が決まると。
その人がいる建物に。
変化が始まる。
壁に亀裂が走る。
外壁が傾く。
建物全体が。
少しずつ。
曲がっていく。
さらに。
その異常は。
建物だけでは終わらない。
家から出ようとすると、身体まで曲がる
SCP-783の影響を受けた建物では。
外へ出ることそのものが。
危険になる。
異常の影響下にある建物の外部を。
物体が越えようとすると。
激しく変形する。
人間なら。
その結果は致命的だ。
そして。
SCP-783に襲われた人間の身体には。
さらに異常な変化が残る。
腕。
脚。
背骨。
長い骨が。
何度も折られる。
普通なら。
それだけで命に関わる。
だが。
傷は異常な速度で。
新しい骨や軟骨によって固定される。
そして。
また折られる。
また固まる。
それが。
何度も繰り返される。
結果。
人間の身体は。
本来あり得ない方向へ。
長く。
不規則に。
歪んでいく。
記録された被害者の中には。
前腕が2.4メートルを超えた者。
身長が12.5メートルにまで達した者もいる。
さらに恐ろしいのは。
その状態でも、生きている被害者がいることだった。

……殺すんじゃないのか。

ええ。それが、この記録の嫌なところです。

生きたまま残す?

少なくとも財団が確保した被害者の中には、生命維持装置につながれたままの人々がいました。
財団は、わざと一人を残した
SCP-783を観察するため。
財団は。
D-209という人物を。
テンビーの住宅へ住まわせた。
家中に。
カメラと録音機器を設置。
そして。
待った。
43日目の夜。
異変が起きる。
午後10時34分。
映像に。
縦に走る奇妙な歪みが現れた。
翌分。
一階の廊下へ。
何かが入ってくる。
だが。
カメラには。
まともに映らない。
D-209には。
ゆっくりと。
何かを引っ掻くような音が聞こえていた。
そして。
足音が。
階段を上がってくる。
逃げようとしても。
窓は開かない。
午後10時37分。
寝室の扉がノックされた。
扉を開けた瞬間
D-209は。
ランプを武器代わりに持ち。
扉の向こうへ。
誰なのか尋ねた。
返事はない。
財団へ。
誰か職員が入ってきたのか確認する。
だが。
観察していた職員たちは。
無線に答えなかった。
D-209は。
扉を開ける。
その瞬間。
家中に。
大きな音が響いた。
すべての電球が割れる。
そして。
D-209の右腕が折れた。
彼は逃げようとする。
だが。
廊下を走れば。
脚が折れる。
階段で転べば。
十数回。
連続して。
骨の折れる音が響く。
折れた骨は。
そのまま異常に固まり。
身体を。
さらに長くする。
それでも。
D-209は。
玄関まで辿り着いた。
ドアノブへ。
手も届いた。
しかし。
指が長く歪みすぎて。
もう。
ドアノブを回すことさえできなかった。
その直後。
廊下から。
引っ掻く音が聞こえる。
D-209は。
何かに引きずられ。
カメラの外へ消えた。
夜が明けるまで。
時折。
骨の折れる音だけが。
家の中に響いていた。
町の子どもたちは、歌で知っていた
財団だけが。
SCP-783を知っていたわけではない。
テンビーの住民たちも。
その存在を知っている。
ただし。
それについて。
公に話すことは。
禁忌とされていた。
それでも。
痕跡は残っている。
子どもたちが歌う。
短い遊び歌。
そこには。
曲がった男。
曲がった杖。
さらわれる子ども。
そして。
車輪の上で壊される。
曲がった小さな男が歌われている。
大人たちは。
語らない。
それでも。
子どもたちは。
歌として。
怪異を受け継いでいる。

知ってるのに、なんで誰も話さないんだ?

原典では、住民がなぜ禁忌としているのか。その理由までは明言されていません。

じゃあ昔から怖がってるだけ?

それだけならよかったのですが。財団は、この町でもっと古いものを見つけます。
町の外れに埋められていたもの
D-209への襲撃が起きた夜。
病院で生命維持されていた。
27人の被害者たちが。
同時に痙攣を起こした。
その多くは。
脳死状態か。
全身麻痺だった。
それでも。
全員が。
同じ時間に動いた。
そして。
町の外れでは。
大量の土が。
突然掘り返されていた。
財団が調査へ向かう。
すると。
住民たちが。
ある場所を取り囲み。
財団職員を近づけようとしなかった。
彼らを退かせ。
地面を見る。
土の中から。
異常に長い足の指が突き出していた。
掘り返すと。
そこには。
数十人分の遺体が。
裸のまま。
頭を下にして。
積み重ねられていた。
腕と脚は。
互いに絡み合い。
結び目のようになっていた。
そして。
その遺体のさらに下には。
別の場所へ続く入口が存在していた。
「語らない」という選択
ここから先。
財団は。
地下の異常空間へ探索隊を送り込んでいく。
しかし。
その前に。
ひとつ気になることがある。
テンビーの住民は。
何も知らなかったわけではない。
SCP-783を知っていた。
子どもたちは。
歌まで知っていた。
そして。
墓が見つかったとき。
住民は。
その場所を取り囲んだ。
なぜ。
彼らは。
それでも語らなかったのだろう。
恐ろしかったから。
怪異を刺激したくなかったから。
町の秘密を。
外へ知られたくなかったから。
あるいは。
もっと別の理由があったのかもしれない。
原典は。
答えを明言しない。
だからこそ。
この沈黙そのものが。
不気味に残る。
怪異は、知られていないから残るのか
昔話や。
土地の伝承には。
奇妙な形で。
危険を伝えるものがある。
夜に山へ入るな。
川へ近づくな。
名前を呼ぶな。
振り返るな。
理由を知らなくても。
決まりだけを守れば。
危険を避けられる。
だから。
説明ではなく。
歌や。
言い伝えや。
禁忌として。
残される。
テンビーの童歌も。
そうしたものだったのかもしれない。
ただ。
ひとつだけ。
大きな違いがある。
この町では。
怪異を語らなくても。
12年後には、また誰かが襲われる。
沈黙は。
怪異を消してはいなかった。
ただ。
次の周期まで。
見えなくしていただけだった。

12年って長いもんな。

ええ。忘れるには十分な時間です。

でも、また来る。

そして、そのたびに。知っている人たちは口を閉ざす。

知らない方が幸せってこともあるけど……これは違う気がするな。

知らないことで消えるものと。

知らなくても戻ってくるものがあります。

SCP-783は。

後者なのでしょう。

十二年後。

町の子どもたちが、また同じ歌を歌っているなら。

それは昔話ではなく。

次に起こることを伝える記録なのかもしれません。

今夜の記録はここまでです。

また次の資料でお会いしましょう。
資料・出典
SCP-783「There Was A Crooked Man」は、S D Locke氏によってSCP Foundationで公開されている創作作品です。原典では、イングランドの集落テンビーで約12年周期に活動する異常存在、その被害者、住民の間で禁忌とされている怪異の存在、童歌、そして町の地下で発見された異常空間が描かれています。本記事では原典の記録をもとに、「土地の人々が知っている怪異を、なぜ語らないのか」「沈黙や伝承は危険から人を守れるのか」という視点から整理・考察しています。SCP-783およびSCP Foundationに関する記述は創作上の設定です。
原典:SCP-783 — There Was A Crooked Man / S D Locke(SCP Foundation、CC BY-SA 3.0)



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