SCP-268――誰もあなたを気にしなくなる帽子

SCP資料

テストで0点を取った時。

授業中に居眠りした時。

あるいは仕事で失敗した時。

一度くらいは思ったことがあるかもしれません。

「誰にも気付かれなければいいのに」と。

今回の資料は、そんな願いを叶える帽子の話です。

司書
司書

本日の資料はSCP-268。

通称「忘却の帽子」です。

そうめん
そうめん

忘却ってことは……記憶を消す帽子?

司書
司書

少し違います。

ですが、その勘違いは無理もありません。

SCP概要

SCP-268は古いニュースボーイキャップです。

見た目はごく普通の帽子ですが、被った人間には異常な効果が現れます。

よく「透明になれる帽子」と説明されることがあります。

ですが、それは正確ではありません。

SCP-268を被った人間は消えません。

普通に見えています。

カメラにも映ります。

それでも、人々はその存在を気にしなくなるのです。

まるで最初からそこにいて当然だったかのように。

そうめん
そうめん

透明人間じゃないのか。

司書
司書

ええ。

だからこそ厄介でした。

財団が欲しがった帽子

当然ながら、財団はこの帽子に注目しました。

被れば警備をすり抜けられる。

監視を避けられる。

潜入任務にも使える。

非常に便利な異常存在に見えたのです。

実際、財団はSCP-268を実戦投入します。

エージェントへ貸与し、実際の任務で使用させたのです。

そうめん
そうめん

まあ正直、俺でも使うと思う。

司書
司書

財団も同じ判断をしました。

問題は、その後です。

誰も覚えていない職員

しばらくして財団は異変に気付きます。

あるエージェントの記録が残っていたのです。

給与記録。

任務記録。

配属記録。

どれも確かに存在していました。

そこで財団は関係者へ聞き取りを行います。

直属の上司。

同じ部署の職員。

管理部門。

しかし返ってきた答えは同じでした。

「そんな人物は知らない」

「聞いたこともない」

誰一人として、そのエージェントを覚えていなかったのです。

ですが記録だけは残っていました。

任務もこなしている。

給与も支払われている。

存在した証拠だけが残り、記憶だけが消えていたのです。

そうめん
そうめん

え?

それ帽子脱いでも戻らないのか?

司書
司書

そこが問題でした。

SCP-268は長時間使用すると影響が残ることが分かったのです。

そうめん
そうめん

便利アイテムだと思ってたのに急に怖くなってきたな……

会話したことすら残らない

財団は追加実験を行いました。

長時間使用者に対して、どのような影響が残るのかを調べたのです。

結果は予想以上でした。

被験者は警備員へ接触します。

普通に会話します。

質問もします。

そして収容エリアのパスワードまで聞き出しました。

警備員は普通に答えました。

しかし後に事情を聞かれると、

その警備員はこう答えます。

「教えた覚えはない」

会話は成立していました。

実際に答えも聞き出しています。

それなのに。

警備員の記憶には何も残っていなかったのです。

そうめん
そうめん

それもう透明化より怖くないか?

司書
司書

見つからないのではありません。

見つかっても重要だと思われないのです。

そうめん
そうめん

そっちの方が嫌だな……

帽子は消えた

そして最後の記録です。

ある日。

財団が保管していたSCP-268が消失します。

厳重に保管されていたはずの帽子は忽然と姿を消していました。

現場には一枚のメモだけが残されていました。

Thanks, I needed my hat back.

「ありがとう。自分の帽子を返してもらうよ」

そして署名。

― L.S.

犯人は不明。

帽子も未回収。

財団は結局、SCP-268を守り切ることができませんでした。

そうめん
そうめん

いや誰なんだよそのL.S.って。

司書
司書

それも含めて未解決です。

なぜ268は怖いのか

SCP-268は透明化の道具ではありません。

透明人間なら、見つかった時点で終わりです。

ですが268は違います。

見つかってもいい。

話しかけてもいい。

会話してもいい。

それでも相手はあなたを重要だと思わない。

だから記憶に残らない。

だから警戒されない。

だから恐ろしいのです。

そうめん
そうめん

便利そうだと思ってたんだけどな。

司書
司書

財団もそう考えました。

SCP-268が本当に恐ろしい理由

人は時々、

誰にも見られたくないと思います。

誰にも気付かれたくないと思います。

ですが。

誰からも気にされなくなりたいとは思いません。

SCP-268が奪うのは視線ではありません。

存在感です。

あなたがそこにいるという事実そのものを、少しずつ曖昧にしていくのです。

そうめん
そうめん

気付かれないのと、忘れられるのは違うんだな。

司書
司書

ええ。

それがSCP-268の本当の異常性です。

まとめ

SCP-268は透明人間になれる帽子ではありません。

被った人間を「そこにいて当然の存在」に変えてしまう帽子です。

最初は便利な道具に見えました。

ですが財団は、その便利さの代償を知ることになります。

誰にも見つからないこと。

それ以上に恐ろしいのは、誰にも気にされなくなることだったのです。

司書
司書

今夜の記録はここまでです。

また次の資料でお会いしましょう。

出典

SCP-268 “Cap of Neglect”

Author: Pair Of Ducks

Source:
https://scp-wiki.wikidot.com/scp-268

ライセンス

This work is licensed under Creative Commons Attribution-ShareAlike 3.0 License (CC BY-SA 3.0).

そうめん
そうめん

実はさっきから帽子被ってるんだよ。

司書
司書

そうですか。

そうめん
そうめん

もっと驚けよ。

コメント