
ようこそ、深夜資料室へ。
人は知らないものを恐れます。
暗闇の中の何か。
正体の分からない音。
説明できない現象。
ですが今夜の資料は少し違います。
知らないものが怖いのではありません。
むしろ、
知っていると思い込んでしまうこと。
それが今夜の恐怖です。
SCP-2316。
そして、この資料を読み進める前に。
一つだけ覚えておいてください。
あなたは水の中の死体を認識していない。
SCP概要

いきなり怖いこと言うなよ。

SCP-2316は湖で確認された異常現象です。
湖面には複数の死体が浮かんでいます。
しかし問題は死体そのものではありません。

じゃあ何が危ないの?

それを見た人間が、
死体を知人だと思い込むのです。

知人?

ええ。
昔の友人。
学生時代の同級生。
幼い頃によく遊んだ相手。
そうした人物として認識してしまいます。

でも実際は違うんでしょ?

そのはずです。
しかし影響を受けた人間は、
そうは思えなくなります。
湖の向こう側
静かな湖だった。
風は弱く、
水面もほとんど揺れていない。
遠くから見れば、
ただの景色にしか見えない。
だが湖面には人影が浮かんでいる。
一人ではない。
二人でもない。
何人もの死体が、
まるでこちらを見つめるように漂っている。
その時、
ある者は気付く。
「あれは昔の友達じゃないか」
名前を思い出す。
声を思い出す。
遊んだ記憶を思い出す。
もう何年も忘れていたはずの顔が、
突然そこにある。
だから近付こうとする。
助けなければと思う。
だが財団は知っている。
それは友人ではない。
少なくとも、
そう信じてはいけない。
なぜなら、
湖へ向かった者は帰ってこないからだ。
なぜこれほど恐ろしいのか

でもさ。
本当に友達だった可能性は?

そこが恐ろしいのです。
人は自分の記憶を信じています。
昨日何をしたか。
誰と会ったか。
どんな友人がいたか。
そうした記憶が自分自身を形作っています。

まあ普通そうだよね。

しかしSCP-2316は、
その前提を壊します。
目の前の死体が友人に見える。
名前まで思い出せる。
思い出まで蘇る。
ですが、
それが本物の記憶とは限らない。

自分の記憶なのに信用できないのか。

ええ。
この作品の恐怖は怪物ではありません。
自分自身の認識への不信感です。
なぜSCP-2316は有名なのか

SCP-2316を語る上で欠かせないのが、
ある一文です。

あの最初のやつ?

そうです。
You do not recognize the bodies in the water.
日本語にすれば、
「あなたは水の中の死体を認識していない」
という意味になります。

でも何回も言う必要ある?

あります。
なぜならこれは警告だからです。
財団は職員に繰り返し教えます。
そして読者にも繰り返し伝えます。
あなたが見ている死体は知人ではない。
そう思い込むな。
近付くな。
信じるな。
その結果、
読者自身が認識災害の対象になったような感覚を味わうのです。

読んでるだけなのに巻き込まれてる感じするな。

それこそが2316最大の魅力でしょう。
「懐かしさ」の恐怖

多くの怪異は恐怖を武器にします。
ですが2316が利用するのは、
恐怖ではありません。
懐かしさです。

懐かしさ?

もし湖に浮かんでいるのが、
知らない死体だったら。
多くの人は近付きません。
しかし、
幼い頃の友人だったらどうでしょう。
助けたいと思うかもしれない。
もう一度会いたいと思うかもしれない。
その感情こそが、
SCP-2316の罠なのです。
まとめ
SCP-2316は湖の怪物の話ではありません。
死体の正体を暴く物語でもありません。
描かれているのは、
人間が自分の記憶をどれほど信頼しているか。
そして、
その記憶が裏切った時に何が起きるのか。
という恐怖です。
本当に昔の友人だったのか。
それともそう思わされていただけなのか。
その答えは最後まで語られません。
だからこそ、
この作品は多くの読者の記憶に残り続けています。
そして今もなお、
財団は同じ警告を繰り返しています。
あなたは水の中の死体を認識していない。

今夜の記録はここまでです。
また次の資料でお会いしましょう。
出典
作品名:SCP-2316
作者:djkaktus
原典:https://scp-wiki.wikidot.com/scp-2316
ライセンス
SCP-2316 by djkaktus is licensed under the Creative Commons Attribution-ShareAlike 3.0 License.
SCP Foundation:https://scp-wiki.wikidot.com/
ライセンス:CC BY-SA 3.0

もし本当に友達だったら?

あなたは水の中の死体を認識していません。

質問に答えてくれ。



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