クリスマスの「玩具」は、誰が作っていたのか――SCP-4666と12夜のユールマン

奇妙な記録
そうめん
そうめん

クリスマスの夜に来る老人って言ったら、普通はサンタだよな。

司書
司書

ええ。子どもへ贈り物を届ける老人です。

そうめん
そうめん

今回もそういう話?

司書
司書

ある意味では。

そうめん
そうめん

嫌な言い方だな。

司書
司書

彼も、子どものいる家を訪れます。

司書
司書

そして、ときどき玩具を置いていきます。

そうめん
そうめん

じゃあサンタじゃん。

司書
司書

その玩具を誰が作ったのか知るまでは、そう思えるかもしれません。

12月になると、世界のさまざまな場所で「夜にやってくる何か」の話が語られる。サンタクロースだけではない。良い子には贈り物を与え、悪い子には罰を与える。冬の夜と怪物が結びついた伝承は、決して珍しいものではない。

SCP-4666も、その系譜を思わせる存在だ。非常に痩せた老人。雪に覆われた土地。幼い子どものいる家。そして12月の終わりにだけ繰り返される訪問。

ただし、この老人が家へ残していく「プレゼント」は、祝福とはほど遠い。

SCP Foundationで公開されている創作作品、SCP-4666「The Yule Man」。原典が描いているのは、何百年ものあいだ繰り返されてきた、ひとつの冬の儀式である。

12月21日から始まる

SCP-4666は、極端に痩せた高齢男性のような姿をしている。身長はおよそ2メートルから2.3メートル。ヨーロッパ系の老人に見えるが、その正体も年齢も分かっていない。

特徴的なのは、どれほど寒い場所でも一切衣服を身につけないこと。そして、通常では説明できないほど離れた地域へ短時間で移動できることだ。

しかし一年中活動しているわけではない。

活動期間は毎年、12月21日から22日にかけての夜から、1月1日から2日にかけての夜まで。連続する12夜だけだ。

財団は、この期間に起きる一連の現象を「Weissnacht Event」と呼んでいる。

狙われる家にも共通点がある。北緯40度より北側。雪が積もり続ける地域。人里から離れた住宅。そして、その家には8歳未満の子どもが少なくとも一人暮らしている。 [oai_citation:1‡The SCP Foundation](https://scp-wiki.wikidot.com/scp-4666)

最初の7夜

異変に最初に気づくのは、たいてい子どもだ。

家から離れた雪原。森の端。暗闇の中に、痩せた老人が立っている。

近づいてくるわけではない。ただ、家を見ている。

場合によっては、子どもが夜中に目を覚ます。窓を見ると、そこにSCP-4666がいる。

眠っている自分を、外から見つめている。

この状態が、最初の7夜ほど続く。

親に話しても、外には何も残っていないかもしれない。だが8夜目を過ぎるころになると、異変は子どもだけのものではなくなる。

屋根の上を歩く音

8夜目から11夜目。

今度は家族全員が異変を感じ始める。屋根や屋根裏から、誰かが歩いているような音がする。そして家の中には、原因の分からない強烈な悪臭が漂う。

調べても、誰もいない。侵入された形跡もない。

家族はようやく、自分たちが何かに狙われているのではないかと考え始める。あるいは、家そのものが「憑かれている」のではないかと。

そして12夜目。

二つのうち、どちらかが起きる。

ひとつ目のクリスマス

最も多いのは、家族が襲われるケースだ。

SCP-4666は家族を無力化し、一か所へ集める。そして互いの姿が見える状態で、儀式的とも思える方法によって殺害する。

ただし、一人だけ殺さない。

8歳未満の子どもを一人、連れ去る。

この行動は、少なくとも何世紀にもわたって繰り返されてきたとみられている。財団が調査した記録だけでも、同じ特徴を持つ事件は18世紀以前まで遡り、さらに古い文献には紀元前後まで関連を疑わせる記述が残っている。 [oai_citation:2‡The SCP Foundation](https://scp-wiki.wikidot.com/scp-4666)

そうめん
そうめん

連れていった子はどうなるの?

司書
司書

長い間、分かっていませんでした。

そうめん
そうめん

長い間?

司書
司書

2018年に、一人だけ戻ってきました。

もうひとつのクリスマス

Weissnacht Eventのおよそ15%では、まったく違う結末になる。

家族は殺されない。

夜中に家の中を歩く音は聞こえる。しかし翌朝になっても、誰も怪我をしていない。

代わりに。

子どものベッドの足元に、プレゼントが置かれている。

木製の太鼓。小さなナイフ。笛。人形。ボール。ヘアブラシ。

どれも粗末な手作りの玩具に見える。

だが調べると、材料がおかしい。

皮膚。骨。腱。髪。乳歯。

材料の多くは、人間の子どもの身体だった。

財団が回収した玩具の中には、複数の子どもの遺骸を組み合わせて作られたものもある。あるヘアブラシには43本の乳歯が使われ、その一本一本が別の子どものものだった。 [oai_citation:3‡The SCP Foundation](https://scp-wiki.wikidot.com/scp-4666)

それでも、まだひとつ分からないことがあった。

誰が、この玩具を作っているのか。

2018年、ひとつの「人形」が見つかった

2018年1月2日。アラスカ州フーナーで発生したWeissnacht Eventのあと、財団は複数の玩具を回収した。

その中に、等身大の人形があった。

痩せた少女の身体へ、汚れた布で作った服が縫い付けられている。口は腱で縫い閉じられ、別の子どもの髪が頭部へ取り付けられ、目の代わりに丸い石が入れられていた。

財団が調べた結果、その「人形」は。

まだ生きていた。

少女の名前は、エカテリーナ・モロゾワ。7歳。

彼女は2016年、ロシアの自宅からSCP-4666に連れ去られた子どもだった。

二年間。

彼女は、SCP-4666のいる場所で生きていた。 [oai_citation:4‡The SCP Foundation](https://scp-wiki.wikidot.com/scp-4666)

地下

エカテリーナは病院で一時的に意識を取り戻した。

残された時間は、およそ30分。

財団職員は彼女から、連れ去られた夜について聞き取った。

彼女は覚えていた。

SCP-4666が家族を長時間苦しめたこと。家族の声が聞こえなくなったあと、自分だけが大きな袋へ入れられたこと。

袋の中には、すでに別の子どもたちがいた。

そしてその夜、SCP-4666は別の家も訪れた。

袋の外から悲鳴が聞こえ。

家を出るたびに。

新しい子どもが袋へ入れられた。

夜が終わると、子どもたちは連れていかれた。

地下深く。

土と泥と氷に囲まれた場所。

そこには無数の穴とトンネルがあり、あちこちに骨が転がっていた。

そして。

大勢の子どもが暮らしていた。

子どもたちは、玩具を作っていた

エカテリーナは、同じ穴で暮らしていた子どもたちの名前を覚えていた。

ルネ。ヘクラ。サーシャ。ポール。

彼らには仕事があった。

玩具を作ること。

作らなければ、食事を与えられない。

手を止めてもいけない。眠ってもいけない。

従わなければ、殴られる。焼かれる。身体の一部を奪われる。

そして一部の子どもは、SCP-4666に食べられたと彼女は証言している。

ここで、それまで別々に見えていた二つの出来事がつながる。

家から連れ去られる子ども。

別の家へ届けられる玩具。

玩具はSCP-4666が作っていたのではない。

連れ去られた子どもたちが作らされていた。

そうめん
そうめん

じゃあ、エカテリーナも玩具を作ってた?

司書
司書

ええ。

そうめん
そうめん

なんで本人が人形になったの?

司書
司書

彼女は病気になりました。

そうめん
そうめん

……それで?

司書
司書

玩具を作れなくなったんです。

作れなくなった子ども

財団職員はエカテリーナへ尋ねた。

なぜ、あなたはこんな姿になったのか。

彼女を「人形」にしたのはSCP-4666ではなかった。

一緒に暮らしていた子どもたちだった。

ルネ。

ヘクラ。

サーシャ。

ポール。

彼らがやった。

やりたかったからではない。

やらなければならなかったから。

エカテリーナは病気になり、玩具を作れなくなった。

そして彼女は、財団職員へ理由を伝えた。

「玩具を作れなくなったら、玩具になる。」

それが、彼女の残した最後の説明だった。 [oai_citation:5‡The SCP Foundation](https://scp-wiki.wikidot.com/scp-4666)

サンタクロースを反転させた怪物

ここからは、この記録をひとつの怪談として考えてみたい。

SCP-4666には、クリスマスの伝承を反転させたような要素がいくつもある。

老人が夜に家を訪れる。子どもを意識する。大きな袋を持つ。玩具を届ける。そして、その玩具を作る場所がある。

普通の物語なら、そこには幸福がある。

しかしSCP-4666では、すべてが逆になる。

袋にはプレゼントではなく子どもが入れられる。工房で働くのは妖精ではなく、連れ去られた子どもたち。そして届けられる玩具そのものにも、子どもたちの身体が使われている。

つまりSCP-4666は、クリスマスから「優しさ」だけを取り除いた存在に見える。

習慣だけが残る。

訪問する。

子どもを選ぶ。

玩具を作る。

プレゼントする。

目的を失った儀式だけが、何百年も続いている。

なぜ12夜なのか

SCP-4666がなぜこの期間だけ活動するのかは分かっていない。どの家族を殺し、どの家族へ玩具だけを残すのか。その基準も不明だ。

財団が確認した同種の事件は、近代だけのものではない。数百年前の記録にも、さらに古い時代の文献にも、同じ存在を思わせる痕跡が残っている。

だとすれば。

SCP-4666にとって、人間のクリスマス文化のほうが後から生まれた可能性さえある。

私たちが知っている冬の伝承と、この怪物に何らかの関係があるのか。それとも、似ているだけなのか。

原典は答えを出していない。

ただ、ひとつだけ確かなことがある。

SCP-4666は。

今年も12月になれば。

また活動を始める。

プレゼントだけを見てはいけない

SCP-4666の記録は、途中まで読めば「冬に現れる殺人鬼」の話に見える。

しかしエカテリーナの証言によって、見え方が変わる。

朝、ベッドの足元に置かれていた玩具。

それだけを見れば、一晩で突然現れた奇妙な物体だ。

だが、その向こう側には時間がある。

連れ去られた夜。

地下へ運ばれた時間。

寒さに耐えた時間。

眠らず、手を動かし続けた時間。

そして。

作れなくなった子どもが、材料へ変わる時間。

ひとつの物だけを見ていては、その背景は分からない。

だから記録が必要になる。

誰が作ったのか。

どこから来たのか。

その前に何があったのか。

SCP-4666の「玩具」は。

完成品だけを見てはいけない記録なのかもしれない。

そうめん
そうめん

エカテリーナは助かったの?

司書
司書

いいえ。

そうめん
そうめん

……そうか。

司書
司書

発見された時点で、彼女の身体は限界に達していました。

司書
司書

意識を取り戻してから、およそ30分。

司書
司書

財団職員へ地下のことを話し。

司書
司書

その後、亡くなっています。

そうめん
そうめん

じゃあ、地下にいた他の子たちは?

司書
司書

分かりません。

そうめん
そうめん

今もいるかもしれない?

司書
司書

SCP-4666は、現在も収容されていません。

司書
司書

そして財団の記録上。

司書
司書

活動する12夜は。

司書
司書

毎年、やってきます。

司書
司書

今夜の記録はここまでです。

司書
司書

また次の資料でお会いしましょう。

資料・出典

SCP-4666「The Yule Man」は、Hercules Rockefeller氏によってSCP Foundationで公開されている創作作品です。原典では、毎年12月末の12夜に活動するSCP-4666と、幼い子どものいる孤立した家庭で発生する「Weissnacht Event」が記録されています。また、連れ去られた子どもエカテリーナ・モロゾワの証言によって、誘拐された子どもたちが地下で玩具を作らされ、作業できなくなった子ども自身が玩具へ加工されていたことが明らかになります。本記事では原典の記録と考察を分け、クリスマスの贈り物や玩具というモチーフがどのように反転されているのかという視点から整理しています。SCP-4666およびSCP Foundationに関する記述は創作上の設定です。

原典:SCP-4666 — The Yule Man / Hercules Rockefeller(SCP Foundation、CC BY-SA 3.0)

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