ある農家の玄関を開ける。
すると。
そこには別の世界が広がっている。
そこから現れる黒い人影は、
人間の胸へ手を差し込み、
心臓だけを持ち去る。
ここまでなら怪物の話です。
ですがSCP-1983で本当に恐ろしいのは、
怪物ではありません。
一冊の報告書でした。

本日の資料はSCP-1983です。

導入から嫌な予感しかしないな。

ええ。
ですが今回の記録は、怪物よりも人間の方が印象に残るかもしれません。
SCP概要
SCP-1983はワイオミング州で発見された廃農家です。
異常性があるのは建物そのものではなく、正面玄関の向こう側でした。
扉の先には異空間が広がっており、
そこから黒い人型存在が現れます。
彼らは人間の心臓を奪い、
再び闇の中へ消えていきます。
さらに厄介なことに、
この存在には祈りを込めた銀弾しか効果がありません。

普通の銃じゃダメなのか。

ええ。
だからこそ財団は調査に苦戦しました。
帰れない場所
財団は機動部隊を派遣します。
しかし帰還しない。
第二陣も帰還しない。
さらに調査は続きます。
Dクラス職員も投入されます。
ですが通信は途絶。
誰も戻りません。
当時の財団は、
すでに気付いていました。
あの扉の向こうは、
入ることはできても帰ることはできない場所なのだと。

それでも送り込まなきゃいけないのか……

それが財団という組織です。
文書1983-15
異変が終息した後、
財団は内部への進入に成功します。
そこで発見されたのは、
帰還しなかった隊員達の遺体。
そして一冊の報告書でした。
文書1983-15。
それを書いたのは、
異空間内に取り残されたエージェント・バークレーです。

生還報告じゃないのか。

いいえ。
むしろ遺書に近いものでした。
それでも進んだ
バークレー達は異空間の中を進み続けました。
出口を探すため。
仲間を助けるため。
そして異常を終わらせるためです。
ですが状況は悪化する一方でした。
仲間は減る。
食料は減る。
休息も満足に取れない。
それでも彼らは進みます。
なぜなら。
立ち止まっても助からないことを知っていたからです。

もう調査じゃなくて遭難だな。

ええ。
そして彼ら自身も、それを理解していました。
巣を見た
やがてバークレー達は、
異空間の奥で怪物達の巣を発見します。
そこには大量の心臓がありました。
奪われた心臓。
脈打つ心臓。
そして。
そこから新たな怪物が生まれていました。
彼らが心臓を集めていた理由。
それは仲間を増やすためだったのです。

最悪だな……

ですが本当の絶望は、その先にありました。
祈れなくなった男
怪物を倒すには、
祈りを込めた銀弾が必要でした。
それだけが有効な武器。
ですがバークレーは、
その巣を見てしまった。
もし神がいるのなら。
なぜこんな場所が存在するのか。
なぜこんなものを許したのか。
彼は信仰を失います。
武器はある。
弾もある。
ですが祈れない。
だから撃てない。
だから勝てない。
それがバークレーの辿り着いた絶望でした。

そんなの反則だろ……

だから彼は別の方法を選びました。
SCP-1983が本当に残したもの
バークレーは巣を破壊できませんでした。
怪物も止められませんでした。
ですが彼は諦めませんでした。
報告書を書き続けたのです。
自分達の死を無駄にしないために。
次に来る誰かへ託すために。
そして最後に、
こう書き残します。
Good luck.
(幸運を。)
Morituri te salutant.
(死にゆく者より、敬礼を。)
死にゆく者より、敬礼を
その後。
D-14134が投入されます。
彼が何を見たのか。
何を考えたのか。
報告書を読んだのか。
私たちは知りません。
巣をどのように破壊したのかも分かりません。
ですが結果だけは残っています。
SCP-1983は終了した。
そしてD-14134にはFoundation Starが授与されました。
もし。
彼がバークレーの報告書を読んでいたのなら。
最後の任務は、
バークレーからD-14134へ引き継がれたのかもしれません。

怖い話だったはずなのにな。

最後に残るのは恐怖ではなく、
敬意なのかもしれません。
まとめ
SCP-1983は心臓を奪う怪物の記録です。
ですが本当に描かれているのは、
帰れないと知りながら記録を残した人々の物語でした。
そして、
その記録を受け継いだかもしれない一人のDクラスの物語でもあります。

今夜の記録はここまでです。
また次の資料でお会いしましょう。
出典
SCP-1983 “Doorway to Nowhere”
Author: Tanhony
Source: https://scp-wiki.wikidot.com/scp-1983
ライセンス
This work is licensed under Creative Commons Attribution-ShareAlike 3.0 License (CC BY-SA 3.0).

結局、一番すごかったのはバークレーか、D-14134か。

どちらかではなく、両方なのでしょう。

……だな。



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