SCP-3515――帰りたい場所ほど遠くなる

SCP資料
司書
司書

ようこそ、深夜資料室へ。

誰にでも帰りたい場所があります。

生まれ育った家。

昔住んでいた町。

子供の頃の思い出。

ですが人は知っています。

どれほど懐かしくても、

過去へ帰ることはできないと。

今夜の資料はSCP-3515。

それは、

帰りたい場所へ辿り着いた人間の記録です。

そうめん
そうめん

なんか今回は切ない系?

司書
司書

そうかもしれません。

ですが安心しないでください。

この記録は、決して優しい話ではありません。

SCP概要

司書
司書

SCP-3515は一枚の絵画です。

異常性は単純です。

絵の近くにいると、

どこか遠くで誰かが土を掘る音が聞こえる。

それだけです。

そうめん
そうめん

地味だな。

司書
司書

ええ。

ですが本当に恐ろしいのはその先でした。

対象が絵の近くで眠ると、

姿を消してしまうのです。

D-6042は実験のため絵画付近で就寝した。

翌朝。

対象の姿は消えていた。

しかし通信だけは継続していた。

財団は、その向こう側の記録を受信することになる。

懐かしい家

目を覚ます。

見覚えのある天井だった。

見覚えのある壁紙だった。

子供の頃に使っていた家具が並んでいる。

そこは幼少期を過ごした家だった。

だが誰もいない。

声もない。

生活の気配もない。

静寂だけがあった。

司書
司書

失われたはずの場所。

もう戻れないはずの場所。

それが目の前にありました。

そうめん
そうめん

だったら少し嬉しい気もするけど。

司書
司書

最初はそうだったでしょう。

ですが家の中には一つだけ、

記憶にないものがありました。

あの絵です。

そして。

どこか遠くで土を掘る音が聞こえていました。

ドアの向こう

音は少しずつ大きくなる。

対象は不安になった。

外へ出ようとする。

玄関へ向かう。

ドアノブを回す。

扉を開く。

そこで彼は立ち尽くした。

外には何もなかった。

道路もない。

庭もない。

空もない。

ただ土だけが広がっていた。

どこまでも。

どこまでも。

世界そのものが埋められてしまったかのように。

そうめん
そうめん

うわ……

司書
司書

彼が帰ってきたと思った場所は、

故郷ではありませんでした。

巨大な土の世界の中に取り残された、

家の形をした孤島だったのです。

掘る

他にできることはなかった。

対象は土を掘り始めた。

掘る。

掘る。

掘る。

土の向こうに何かあると信じて。

時間の感覚は失われていった。

何日経ったのか。

何年経ったのか。

分からない。

ただ掘り続けた。

やがて土の中から何かが現れる。

それは人間の死体だった。

そうめん
そうめん

誰の?

司書
司書

最初は分かりません。

ですが彼は掘り続けます。

そして気付くのです。

土の中の自分

死体の顔には見覚えがあった。

それは自分だった。

一体ではない。

二体でもない。

掘るたびに現れる。

また掘る。

また現れる。

どれも自分だった。

古いもの。

新しいもの。

腐敗したもの。

潰れたもの。

土の中には、

数え切れないほどの自分自身が埋まっていた。

そうめん
そうめん

なんだよそれ……

司書
司書

怪物に追われる話ではありません。

ですが、この瞬間。

彼は理解してしまいます。

ここで同じことが、

何度も繰り返されていたことを。

SCP-3515が残酷な理由

司書
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3515は脱出の物語ではありません。

真相解明の物語でもありません。

それは、

失われた場所へ戻りたいという願いが、

どこまでも裏切られる物語です。

対象はさらに掘り進めた。

頭上には巨大な木の根が伸びている。

その先には暗闇が見える。

出口かもしれない。

そう思った。

だから掘った。

掘り続けた。

だがその時。

土が崩れ始める。

上から何かが落ちてくる。

死体だった。

自分自身の死体だった。

一体。

また一体。

さらに一体。

通信記録はそこで途絶える。

まとめ

司書
司書

SCP-3515は怪物の話ではありません。

それは、

帰りたい場所を求め続ける物語です。

懐かしい家。

懐かしい記憶。

もう一度戻りたいと思う過去。

ですが人は過去へ帰ることはできません。

そして3515は、

その事実をあまりにも残酷な形で突き付けます。

彼は掘り続けた。

出口を探して。

故郷を探して。

自分自身を掘り起こしながら。

そして最後まで、

帰ることはできなかった。

帰りたい場所ほど遠くなる。

司書
司書

今夜の記録はここまでです。

また次の資料でお会いしましょう。

出典

作品名:SCP-3515 “Unearth”
作者:psul

原典:
https://scp-wiki.wikidot.com/scp-3515

ライセンス

本記事は SCP Foundation の作品
「SCP-3515 “Unearth”」
(著者:psul)
を元に執筆しています。

原作:
https://scp-wiki.wikidot.com/scp-3515

SCP Foundation:
https://scp-wiki.wikidot.com/

ライセンス:
CC BY-SA 3.0
https://creativecommons.org/licenses/by-sa/3.0/

そうめん
そうめん

帰りたい場所って、

本当にあった頃が一番近かったのかもな。

司書
司書

だから人は、思い出の中にしか帰れないのでしょう。

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