
ようこそ、深夜資料室へ。
人は怪物を恐れます。
暗闇を恐れます。
死を恐れます。
ですが。
今夜の記録は少し違います。
もし誰か一人が消えたとして。
誰も探さなかったら。
誰も思い出さなかったら。
その人は本当に存在していたと言えるのでしょうか。
今夜の資料はSCP-3935。
サルベーションという町で起きた異常の記録です。
そしてこの物語は、
怪物の話ではありません。
忘れられた誰かの話です。
SCP概要

SCP-3935はインディアナ州サルベーションに存在する異常空間です。
正確にはサルベーション高校地下に広がる異常領域ですね。

地下ダンジョン的な?

そう単純でもありません。
空間は歪み。
時間は乱れ。
学校全体が異常現象に飲み込まれていきます。
さらに問題なのは、
異常が学校だけで完結していないことです。
町全体に広がっている。

最初から嫌な予感しかしないな。
地下から聞こえる声

異常の始まりは些細なものでした。
地下から誰かの声が聞こえる。
プールの底に亀裂が入る。
鏡の中に奇妙な影が映る。
校内放送に知らない声が混じる。

最初は小さな違和感でした。
しかし違和感は増えていきます。
誰かが消える。
誰かが沈む。
校舎の構造が変わる。
そして誰もが、
何かがおかしいと感じながらも動こうとしません。

それが一番怖くない?

ええ。
この作品では怪異より先に、
人間の反応がおかしいのです。
9人しかいない

やがて異常現象の中で、
9人の少女らしき存在が繰り返し目撃されます。
旗竿の近く。
校舎の窓。
池の底。
夜の校庭。
どこにでも現れる。
しかし後年、
当時を知る教師の証言に奇妙なものがありました。

来たな。

ええ。
彼女は写真を見てこう言うのです。
「チアリーダーたちね」
そして少し考えた後、
こう続けます。
「でも10人いたはずなのよ」

……1人足りない。

その通りです。
SCP-3935を語る上で、
最も有名な違和感ですね。
妊娠した少女

サルベーションは閉鎖的な町でした。
宗教色も強く、
噂はすぐに広がる。
その中で、
未婚で妊娠した少女がいたという証言があります。
少女は異変の前から、
プール付近で奇妙な音を聞いていました。
何かを見ていました。
そして。
その後の記録は曖昧になります。

つまりその子が……?

原典は答えません。
妊娠した少女が誰なのか。
10人目なのか。
何が起きたのか。
断定できる情報はありません。
ですが。
読者の多くが二つを結び付けるのも自然でしょう。
地下へ続く道

金曜日。
閉鎖されたはずの学校に生徒たちが集まります。
誰も理由を説明できません。
しかし誰も疑問に思いません。
そして校舎は変化していきます。
廊下は伸びる。
階段は曲がる。
生徒たちは進んでいるはずなのに、
気付けば地下へ降りている。

地下深く。
石造りのアーチ。
その先には奇妙な光景が広がっていました。
泣きながら地面を掘る女性。
燃える農場。
吊られた9人の影。
そして。
黒い小さな人影。
何かがそこにいた。
しかし最後まで、
それが何なのかは分かりません。
忘れられた10人目はどこへ消えたのか

ここからは考察です。
SCP-3935には怪物がいます。
異常空間もあります。
不気味な人影もいます。
ですが。
私はそれらが本質ではないと思っています。

じゃあ何が本質なんだ?

忘却です。
誰かが消えた。
何かが起きた。
それなのに、
町全体が忘れてしまった。
あるいは。
忘れることを選んだ。

……。

だから9人しか現れない。
だから10人目が分からない。
だから誰も説明できない。
SCP-3935の恐怖は、
地下に何かがいることではありません。
誰か一人が消えたことに気付きながら、誰も思い出せなくなっていることです。
サルベーションが埋めたもの

原典は最後まで答えを与えません。
10人目の正体も。
少女の運命も。
黒い人影の正体も。
全て曖昧なままです。
ですが。
一つだけ確かなことがあります。
サルベーションという町は、
何かを地下へ埋めた。
記憶の中から消した。
そして忘れた。
しかし。
忘れられた側は消えなかった。
だから今も、
地下からこちらを見上げているのかもしれません。
まとめ

SCP-3935は地下の怪物の物語ではありません。
異常空間の物語でもありません。
それは、
忘れられた誰かの物語です。
10人いたはずなのに9人しかいない。
誰も理由を説明できない。
誰も真相を覚えていない。
だからこそ不気味なのです。

怪物は倒せます。
異常現象も封じ込められます。
ですが。
誰かを忘れてしまった記憶は、
二度と元には戻らないのかもしれません。

今夜の記録はここまでです。
また次の資料でお会いしましょう。
出典
作品名:SCP-3935 – This Thing a Quiet Madness Made
作者:djkaktus
原典:https://scp-wiki.wikidot.com/scp-3935
ライセンス
SCP-3935 “This Thing a Quiet Madness Made” by djkaktus is licensed under the Creative Commons Attribution-ShareAlike 3.0 License.
SCP Foundation is licensed under CC BY-SA 3.0.
おまけ

司書、俺が消えたらどうする?

記事にします。

探せよ。



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