夜中、一人で歩いているとき。
遠くに誰かが立っている。
酔っ払いだろうか。
そう思って通り過ぎようとした。
だが、その男は――
笑っていた。
ただ笑っているだけなら、まだいい。
問題は、
その歩き方だった。
深夜の路上で出会った「笑う男」

司書さん、夜道で変な人に会う系?
こういうの普通に嫌なんだけど。

今回の記録には、幽霊も怪物も出てきません。

じゃあ安心じゃん。

ただし、
最後まで相手が人間だったのかは分かりません。

やっぱり安心できないやつじゃん。

海外のインターネットで広まった、
「The Smiling Man」
と呼ばれる話です。
午前1時30分ごろ
投稿者には、
夜中に散歩をする習慣があった。
その日も、
午前1時30分ごろ。
一人で静かな住宅街を歩いていた。
道路には誰もいない。
車もほとんど通らない。
いつもと変わらない、
静かな夜だった。
少し先にいる男に気づくまでは。
男は、
道路の反対側を歩いていた。
だが、
普通の歩き方ではなかった。
まるで踊っているように、
身体を不自然に動かしながら進んでいた。
そして何より奇妙だったのは、
その顔だった。
男は、
異様なほど大きな笑顔を浮かべていた。
こちらを見ていない
投稿者は気味が悪いと思った。
しかし、
酔っ払っているだけかもしれない。
関わらない方がいい。
そう考え、
そのまま歩き続けた。
奇妙なのは、
男が投稿者を見ていないことだった。
顔は進行方向へ向いている。
大きな笑顔を浮かべたまま、
踊るように歩いている。
視線すら合わせない。
投稿者は少しだけ安心した。
自分に用があるわけではない。
そのまま通り過ぎればいい。
――そう思っていた。
男が止まった
しばらくして、
投稿者は男の様子を確認した。
男が、
止まっていた。
道路の向こう側。
片足を前に出したような、
奇妙な姿勢のまま。
動かない。
そして、
笑っている。
投稿者も足を止めた。
数秒間。
二人は離れた場所で、
止まったままになった。
投稿者は再び歩き始める。
すると――
男も動き始めた。

え、これもう完全にこっち意識してない?

少なくとも、
「たまたま変な歩き方をしていた人」
では説明しづらくなってきましたね。
進行方向に立っていた
投稿者は怖くなり、
男から距離を取ろうとした。
しばらく歩く。
そして、
男がどこにいるのか確認した。
いない。
道路の反対側から、
男の姿が消えている。
投稿者は安心しかけた。
だが、
前を向いた。
そこに――
男がいた。
さっきまで道路の反対側にいたはずの男が、
投稿者の進行方向に立っていた。
少し離れた先。
こちらへ身体を向け、
あの笑顔のまま。
立っている。

いやいやいや。
どうやって先に行ったの?

そこは説明されていません。

一番説明してほしいところなんだけど。
逃げる
投稿者は、
ついに走り出した。
もう相手が何者なのか確認する余裕はない。
とにかく、
距離を取る。
しばらく走ったところで、
後ろを振り返った。
男は、
追ってきていなかった。
遠くに立っている。
まだ、
笑っている。
投稿者は少し安心した。
そして再び、
家へ向かって歩き始めた。
だが念のため、
もう一度後ろを見る。
その瞬間。
男が――
全力でこちらへ走ってきていた。
笑顔のまま。
投稿者は全速力で逃げた。
もう振り返らなかった。
そのまま家まで走り、
無事に帰宅したという。
The Smiling Manは実話なのか

ここで一度、
事実関係を整理しておきましょう。
The Smiling Manは、
海外インターネット上で広まった怪談として知られている。
有名になった文章は、
Redditの「LetsNotMeet」に投稿された、
「The Smiling Man」
という体験談形式の投稿に由来する。
投稿者は、
夜の散歩中に奇妙な男と遭遇した出来事として語っている。
しかし、
第三者が確認できる証拠が存在するわけではない。
そのため、
実際に発生した事件として確認された話ではない。
現在では、
海外ネット怪談・Creepypasta系の有名作品として扱われることが多い。
また、
後に短編映像作品も制作され、
映像を通じてこの話を知った人も多い。
ただの「変な男」なら説明できる

でもさ。
これ結局、
めちゃくちゃ変な人だっただけじゃないの?

その可能性はあります。
少なくとも、
超常現象が起きた証拠はありません。

じゃあ怪異じゃないじゃん。

問題は、
男の行動を順番に並べたときです。
最初。
男は投稿者を見ていない。
ただ、
道路の反対側を奇妙な歩き方で進んでいる。
ここだけなら、
「変な人を見かけた」
で終わる。
次。
投稿者が止まる。
すると、
男も止まる。
投稿者が歩き始める。
すると、
男も動き始める。
さらに。
男は一度、
投稿者の視界から消える。
そして次に現れたときには、
投稿者の進行方向に立っている。
最後。
投稿者が逃げる。
男はすぐには追わない。
離れた場所に立っている。
投稿者が歩き始める。
そこで初めて、
全力で追いかけてくる。
最初から投稿者を見ていた?

……あれ?
最初はこっち見てなかったんだよね?

そう語られています。

でも、
こっちが止まったら止まってるじゃん。

そこなんです。
男は、
投稿者と目を合わせていない。
少なくとも、
投稿者からはそう見えていた。
だから投稿者は、
最初こう考えた。
「自分に用があるわけではない」
だが、
その後の行動を見るとおかしい。
投稿者が止まったことを、
男は把握している。
投稿者が歩き出したことも、
把握している。
そして、
投稿者がこれから進む方向まで分かっている。
つまり――
男が投稿者を意識し始めたのは、途中からではない可能性がある。
「追いかけてきた瞬間」が始まりではない
この話を読むと、
最も恐ろしい場面は、
最後に男が走ってくる場面に思える。
笑顔の男が、
突然こちらへ全力疾走してくる。
確かに怖い。
だが、
男が投稿者を狙っていたのだとすれば、
本当に怖い場面はもっと前にある。
最初に、
道路の反対側で踊っていたとき。
男は、
投稿者を見ていなかった。
だから、
投稿者も逃げなかった。
しかし。
男が最初から投稿者の動きを把握していたのなら。
あの不自然な歩き方も。
立ち止まったことも。
一度姿を消したことも。
すべて、
偶然ではなくなる。
男は突然追いかけてきたのではない。
ずっと前から、
投稿者に合わせて動いていたことになる。

……最初に見つけた時点で、
もう始まってたってこと?

そう考えると、
少し印象が変わりますね。
なぜ、すぐに追いかけなかったのか
もう一つ、
奇妙なところがある。
男は、
投稿者をすぐには襲わない。
追いかけることが目的なら、
もっと早く走ればいい。
だが実際には、
投稿者が止まれば止まる。
歩けば動く。
一度姿を消す。
先回りする。
そして、
逃げた投稿者が再び歩き始めたところで、
ようやく走り出す。
まるで、
投稿者が自分をどう認識するのか、
確認しているようにも見える。
気づくか。
止まるか。
逃げるか。
振り返るか。
そして、
安心するか。
もしそうだとしたら。
あの男が楽しんでいたのは、
投稿者を捕まえることではなかったのかもしれない。
自分に気づいた人間が、
少しずつ恐怖へ変わっていく過程そのもの。
そう考えると、
あの異様な笑顔にも、
別の意味が生まれる。
まとめ
The Smiling Man。
この話には、
怪物も幽霊も登場しない。
男が何者だったのかも、
最後まで分からない。
ただの奇妙な人間だった可能性もある。
だからこそ、
この話は妙に現実へ近い。
夜道の向こうに、
変な人がいる。
最初は、
それだけ。
自分を見ているわけでもない。
こちらへ向かってくるわけでもない。
だから、
まだ逃げる理由はない。
だが。
もし、
「相手が自分を見ていない」
と思っているのが、
こちらだけだったとしたら。

これ夜道で変な人見つけたら、
絶対思い出すじゃん。

その場合は、
距離を取ることをおすすめします。

珍しく普通のアドバイスだ。

特に、
相手があなたと同時に止まった場合は。

やめろ。
確認したくなるだろ。

では今夜の記録は、
ここまでです。
また次の資料でお会いしましょう。
出典・補足
「The Smiling Man」は、海外インターネット上で広く知られる体験談形式の怪談です。
有名な文章はRedditの「LetsNotMeet」へ投稿された同名の体験談を起点として広まり、その後、短編映像化などによってさらに知名度を高めました。
ただし、投稿内容を裏付ける公的記録や客観的証拠が確認されているわけではありません。
そのため本記事では、実在事件として断定せず、「海外ネット怪談・Creepypasta系の作品」として紹介しています。
また、本記事後半の、
「男は最初から投稿者の動きを把握していたのではないか」
「恐怖へ変わっていく過程を楽しんでいたのではないか」
という部分は、原文中で明示された事実ではありません。
男が投稿者の停止・移動に合わせること、一度姿を消して進行方向へ現れること、すぐには追わず最後に走り出すことから、深夜資料室として考察したものです。



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