ロシア睡眠実験|15日間眠らなかった人間に起きたこと

奇妙な記録

人間は、眠らなければどうなるのか。

一日なら、強烈な眠気に襲われる。

二日、三日と続けば、集中力や判断力にも異常が現れる。

では――

15日間、一睡もしなかったら?

そして15日後。

その人間たちが、

「眠りたい」ではなく、

「絶対に眠らせるな」

と叫び始めたとしたら。

これは世界中のインターネットで広まった怪談、

「ロシア睡眠実験(The Russian Sleep Experiment)」

の記録である。

15日間眠らなかったら?

そうめん
そうめん

司書さん。人間って何日くらい寝ないでいられるの?

司書
司書

長期間の睡眠不足が心身に深刻な影響を与えることは分かっています。

そうめん
そうめん

まあ、そりゃそうだよね。

司書
司書

ただ、今日の資料は医学の話ではありません。

そうめん
そうめん

その言い方、嫌な予感するな……。

司書
司書

15日間、人間を強制的に眠らせなかったという実験の話です。

そうめん
そうめん

15日!? いや、途中で絶対寝るでしょ。

司書
司書

眠れないようにするんです。

特殊な刺激性ガスを使って。

そうめん
そうめん

……はい。もう嫌です。

司書
司書

実験開始時の被験者たちも、苦痛は覚悟していたでしょう。

ですが、最後には少し事情が変わります。

そうめん
そうめん

どう変わるの?

司書
司書

彼らは、

「眠ること」そのものを恐れるようになります。

1940年代、ソ連の秘密実験

物語の舞台は1940年代後半のソ連。

軍の研究施設で、

五人の囚人を対象とした極秘実験が計画されたという。

内容は単純だった。

五人を密閉された部屋へ入れる。

室内には食料、水、簡易的な設備を用意する。

そして、

人間を眠らせないための刺激性ガスを送り続ける。

実験期間を耐えることができれば、

自由を与える。

囚人たちは、その条件を受け入れた。

こうして、

五人の人間を長期間眠らせない実験が始まった。

5日目――会話が変わり始める

最初の数日間、

大きな異常は起きなかった。

被験者たちは会話をし、

食事をし、

昔の出来事について話しながら時間を潰していた。

しかし五日ほど経つと、

少しずつ様子が変わり始める。

会話の内容が暗くなった。

互いへの疑いが強くなった。

そして一人ずつ、

研究者に向かって、

ほかの被験者について密告するようになった。

研究者たちは、

長期間の睡眠不足による精神的な変化だと考えた。

実験は続行された。

9日目――叫び声

九日目。

一人の被験者が突然叫び始めた。

理由は分からない。

ただ、

叫び続けた。

何時間も。

声が出なくなるほど叫んでも、

ほかの被験者たちはほとんど反応しなかった。

止めようともしない。

心配する様子もない。

まるで、

何も起きていないかのようだった。

やがて別の被験者も叫び始めた。

その後、

室内を観察するための窓が塞がれた。

本のページなどが貼り付けられ、

研究者たちは中を見ることができなくなった。

そして――

部屋から音が消えた。

「もう自由にはなりたくない」

何日経っても、

室内は静かなままだった。

研究者たちは生存確認を試みた。

スピーカーから呼びかける。

反応すれば、

一人を自由にする。

しばらくして、

部屋の中から声が返ってきた。

「もう自由にはなりたくない」

そうめん
そうめん

いや待って。

自由になるために実験受けたんじゃないの?

司書
司書

そうです。

そこから、目的が完全に逆転しています。

15日目――ガスを止める

研究者たちは実験を中止することにした。

刺激性ガスの供給を止める。

すると、

それまで静かだった室内から突然叫び声が上がった。

ガスを戻せ。

止めるな。

そして、

眠らせるな。

被験者たちは必死に訴えた。

実験開始時、

彼らが欲しがっていたものは自由だった。

十五日間耐えれば、

部屋から出られる。

そのために参加した。

ついに、

その日が来た。

それなのに彼らは、

部屋から出ることを拒んだ。

扉の向こう

研究者たちは、

ついに実験室の扉を開けた。

五人のうち、

一人はすでに死亡していた。

残る被験者たちも、

実験開始時とはまるで違う状態になっていた。

長期間の覚醒状態の中で、

自らの身体を傷つけ、

死亡した仲間の身体にまで手をつけていた。

普通であれば耐えられないような状態。

それでも彼らは、

痛みを訴えなかった。

求めていたものは一つだけ。

「ガスを戻せ」

そして、

「眠らせるな」

だった。

そうめん
そうめん

待って待って。

普通なら逆じゃない?

もう限界なんだから寝たいでしょ。

司書
司書

そこが、この話で最も奇妙な部分です。

彼らが恐れたもの

生存者たちは実験室から運び出された。

しかし、

異常は終わらなかった。

彼らは鎮静剤を拒絶した。

眠ることを、

異常なほど恐れていた。

身体は限界を超えている。

本来なら、

何より睡眠を求めるはずだった。

ところが彼らにとって、

睡眠は休息ではなくなっていた。

眠ることこそが、最も避けなければならないものになっていた。

そして、

実際に眠りに落ちた被験者は死亡した。

再びガスを求める

軍は、

残った被験者を再び実験室へ戻すよう命じた。

刺激性ガスを供給し、

再び眠れない状態にする。

研究者たちは反対した。

しかし命令は覆らない。

再びガスが供給されると知った被験者は、

安堵したという。

これで、

眠らずに済む。

だが実験再開直前、

一人が眠りに落ちた。

そして死亡した。

残った被験者は叫んだ。

早くガスを入れろ。

眠らせるな。

状況は完全に制御不能になっていた。

「お前は何なんだ」

やがて、

研究者の一人が耐えきれなくなった。

銃を手にする。

軍の指揮官を撃ち、

さらに被験者の一人を撃った。

最後に残った被験者へ銃を向ける。

そして尋ねた。

「お前は何なんだ」

被験者は笑った。

そして、

自分たちについて語り始めた。

自分たちは、

人間の中に潜んでいる狂気。

人間が毎晩眠ることによって、

押さえ込んでいるもの。

目を覚ましている間、

心の奥から自由になろうとしている存在。

それが、

自分たちなのだと。

研究者は、

最後の被験者を撃った。

被験者は床へ倒れた。

そして最後に、

こう言ったという。

「もう少しで……自由だったのに」

ロシア睡眠実験は実話なのか

そうめん
そうめん

……これ、本当にあった話なの?

司書
司書

いいえ。

ここは明確にしておきましょう。

司書
司書

ロシア睡眠実験が実際にソ連で行われたことを示す、信頼できる記録は確認されていません。

ロシア睡眠実験は、

Creepypastaと呼ばれるインターネット発の創作怪談

として知られている。

広く知られている版は2010年ごろのインターネット投稿へ辿ることができる。

一方で、

それ以前から似た内容が流布していた可能性も指摘されており、

最初の作者や完全な初出については不明瞭な部分も残っている。

また、

この話と一緒に掲載されることの多い、

痩せ細った不気味な人型の写真。

あれも、

実験で撮影された被験者ではない。

ハロウィーン用に制作された、

「Spazm」と呼ばれるアニマトロニクス

として知られている。

つまり、

秘密のソ連研究所で、

五人の囚人が十五日間眠らされなかった。

その出来事自体を、

実話として受け取るべきではない。

それでも、この話には一つ奇妙な点が残る

そうめん
そうめん

じゃあ完全に作り話なんだ。

司書
司書

ええ。

ですが、創作だからこそ一つ考えてみたい部分があります。

そうめん
そうめん

まだあるの?

司書
司書

最初と最後を比べてみてください。

実験開始時。

五人の被験者は、

眠れないことに耐えていた。

ところが十五日後。

彼らは、

眠ることに耐えられなくなっていた。

身体は壊れている。

精神も正常とは言えない。

それでも、

眠るくらいなら、

そのまま壊れていく方を選んだ。

なぜなのか。

彼らは何を恐れていたのか

物語の中では、

彼らは「人間の中に潜む狂気」だと説明される。

だが、

別の見方もできる。

十五日間。

彼らは一度も眠っていない。

一日。

二日。

五日。

十日。

十五日。

私たちから見れば、

異常な状態だ。

しかし、

十五日間ずっと同じ意識で生き続けていた彼ら自身にとっては、

どうだったのだろう。

眠らない状態が、

少しずつ、

彼らにとっての「普通」になっていたとしたら。

そして睡眠とは、

一度、

意識が完全に途切れることだ。

今の自分が消える。

数時間後に目覚める自分が、

本当に同じ自分なのか。

私たちは普段、

そんなことを考えずに眠っている。

だが、

十五日間一度も意識を失っていない人間なら――

睡眠を、

「休息」ではなく「自分が一度消えること」

だと感じてもおかしくない。

そうめん
そうめん

……だから「眠らせるな」って?

司書
司書

もし彼らの感覚そのものが変わっていたなら、

研究者の言う「眠っていい」は、

彼らには別の意味に聞こえていたのかもしれません。

そうめん
そうめん

別の意味?

司書
司書

「今のお前を終わらせる」

「もう少しで自由だった」

最後の被験者は、

撃たれながら、

こう言った。

「もう少しで自由だったのに」

何から自由になろうとしていたのか。

研究施設から?

人間の身体から?

それとも――

眠るたびに元へ戻される、

「普通の人間」から?

答えは書かれていない。

だが、

もし彼らが十五日間で壊れてしまったのではなく、

十五日間かけて、

自分たちはようやく本来の状態へ近づいている

と思うようになっていたとしたら。

最後の言葉は、

少し違って聞こえる。

彼は、

助けてほしかったわけではない。

元に戻りたかったわけでもない。

あと少し。

もう少しだけ眠らずにいれば、

完全に何かから解放される。

彼は、

本気でそう信じていた。

だから、

最後まで恐れていたものは、

死ではなかった。

眠って、再び「普通の人間」に戻されることだったのかもしれない。

まとめ

そうめん
そうめん

……これ今日寝るとき思い出すやつじゃん。

司書
司書

安心してください。

ロシア睡眠実験は創作です。

そうめん
そうめん

よし。その一言だけ覚えて寝るわ。

司書
司書

ええ。

おやすみなさい。

そうめん
そうめん

おやすみ。

司書
司書

目が覚めたときも、

同じあなたであるといいですね。

そうめん
そうめん

最後に余計なこと言うなよ!

司書
司書

今夜の記録はここまでです。

また次の資料でお会いしましょう。

出典・補足

「ロシア睡眠実験(The Russian Sleep Experiment)」は、ソ連で実際に行われた人体実験の記録ではなく、インターネット上で広まったCreepypastaとして知られています。

広く知られる物語は2010年前後のインターネット投稿まで遡ることができますが、それ以前から同様の内容が流布していた可能性もあり、厳密な初出については不明瞭な部分があります。

また、ロシア睡眠実験の「被験者」として掲載されることの多い不気味な人型の画像は、実際の人体実験の写真ではなく、「Spazm」と呼ばれるハロウィーン用アニマトロニクスの画像として知られています。

本記事後半の「彼らは元の自分へ戻ることを恐れていたのではないか」という部分は、原典で明示されている設定ではありません。

物語中で被験者たちが睡眠を極端に恐れるようになること、そして最後に「もう少しで自由だった」と語ることから、深夜資料室として考察したものです。

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