
そうめんさん。夜中に知らない子供が訪ねてきたら、どうしますか?

子供? 迷子とかなら、とりあえず話は聞くかな。家には入れないで警察呼ぶと思うけど。

では、その子が助けを求めるのではなく、何度断っても「中に入れてください」とだけ繰り返していたら?

……それはちょっと嫌だな。

そして、俯いていたその子が顔を上げる。

その目には、白い部分が一つもありません。

いや怖っ。……でも待って。なんで「入れて」なの?

そこなんです。
彼らは多くの記録で、自分からは入ってこないんですよ。
怪異記録概要
名称:ブラック・アイド・チルドレン(Black-Eyed Children / Black-Eyed Kids)
普通の子供とほとんど変わらない姿をしている。
しかし、その目には白目も虹彩もない。
眼球全体が真っ黒。
そして彼らは夜間、家や車の前などに現れ、
「中に入れてほしい」
「車に乗せてほしい」
「電話を使わせてほしい」
などと頼んでくる。
奇妙なのは、彼らが無理やり侵入しようとはしないこと。
何度断られても、
こちらから許可を与えるまで頼み続ける。
深夜の駐車場に現れた二人の少年
ブラック・アイド・チルドレンの代表的な体験談として知られているのが、1990年代のアメリカ・テキサス州で語られた話だ。
夜。
男性が車の中にいると、二人の少年が近づいてきた。
少年たちは映画を観たいのだという。
しかし、お金を家に忘れてしまった。
だから、
家まで車で送ってほしい。
一見すると、それだけのお願いだった。
困っている子供を家まで送る。
それ自体は、不自然な話ではない。
だが男性は、なぜか少年たちを車へ乗せる気になれなかった。
理由は分からない。
ただ、
「こいつらを車に入れてはいけない」
という強烈な感覚があったという。
少年たちは繰り返した。
家はすぐそこだから。
時間はかからないから。
自分たちを車に乗せてほしい。
そのとき男性は、ある違和感に気づく。
少年たちが観たいと言っている映画は、
すでに始まっている。
話が、どこかおかしい。
そして男性は、
それまで俯いていた少年の顔を見た。
そこで初めて気づいた。
少年の目には、
白目がなかった。
虹彩もない。
眼球全体が、真っ黒だった。
男性は少年たちを乗せることなく、その場を離れた。
少年たちは追いかけてこなかったという。
ただ、
去っていく車を見ていた。

いやいや……目が真っ黒な時点で十分怖いって。

普通なら、そこに注目しますよね。

普通なら?

この話には、それより気になる部分があります。
なぜ彼らは、男性が断った時点で諦めなかったのでしょう。
彼らはなぜ「許可」を求めるのか
ブラック・アイド・チルドレンの話には、いくつか共通する特徴がある。
姿は子供。
異常なほど黒い目。
理由の分からない強烈な恐怖。
そして、
こちらの許可を求めること。
家の前なら、
「中に入れてください」
車の前なら、
「乗せてください」
断られても何度も頼む。
ここで一つ、
妙なことに気づく。
なぜ、お願いする必要があるのだろう。
人間を襲えるような存在なら、
扉を壊せばいい。
窓から入ればいい。
車なら無理やりドアを開けることだってできる。
だが、
彼らはそうしない。
玄関の外。
車の外。
必ず境界の向こう側に立ち、
こちらの返事を待っている。

……待って。
もしかして「入れてほしい」んじゃなくて……。

ええ。
「入っていい」と言ってもらう必要がある。
そう考えることもできます。
「入れない」のだとしたら
もちろん、ブラック・アイド・チルドレンが実在する怪異である証拠はない。
ここから先は、この都市伝説に対する考察だ。
もし彼らが、
単に礼儀正しく許可を求めているわけではないとしたら。
もし、
許可がなければ境界を越えられない存在なのだとしたら。
それなら、奇妙だった行動にも意味が生まれる。
彼らは扉を壊さない。
窓を割らない。
断られても、その場から去らない。
必要なのは鍵ではない。
力でもない。
家や車の内側にいる人間からの許可。
ただ、それだけなのかもしれない。

じゃあ「どうぞ」って言った瞬間……。

どうなるのでしょうね。

そこは教えてくれないの!?

記録にないことを事実のようには語れませんから。

ただし――だからこそ、想像できてしまうことはあります。
ブラック・アイド・チルドレンは実在するのか
ブラック・アイド・チルドレンについて、怪異の実在を裏付ける確かな証拠は確認されていない。
代表的な体験談の一つは、1990年代にアメリカ・テキサス州アビリーンでBrian Bethelが経験したとされる出来事まで遡る。
その後、インターネットを通じて似た体験談が広がっていった。
本当に同じ存在を目撃した人間が複数いたのか。
最初の体験談を読んだ人々によって、新しい物語が生み出されていったのか。
現在となっては、確かめることは難しい。
少なくとも、
「黒い目を持つ謎の子供が実在する」と断定できる記録ではない。
現代のインターネット上で成長していった都市伝説として捉えるのが自然だろう。
本当に怖いのは黒い目ではない
ブラック・アイド・チルドレン。
名前だけを見れば、
恐ろしいのはその真っ黒な目だと思ってしまう。
だが、彼らにまつわる話を追っていくと、
別の共通点が浮かび上がる。
彼らは、
こちら側へ来ようとする。
しかし、
自分から境界を越えようとはしない。
必ず、
こちらに選ばせようとする。
「入れてください」
「乗せてください」
もしこれが単なる怪談上の演出ではなく、
彼らに課された「ルール」なのだとしたら。
ブラック・アイド・チルドレンに遭遇したとき、
確認するべきなのは、
その子供の目ではないのかもしれない。
まとめ
深夜。
玄関をノックする音がする。
モニターを見ると、
知らない子供が立っている。
「お母さんとはぐれました」
それなら警察を呼んであげればいい。
外から話を聞くこともできる。
だが、
「警察を呼ぶね」
そう伝えても帰ろうとせず、
何度断っても、
ただ同じ言葉だけを繰り返していたら。
「中に入れてください」
そのとき考えるべきなのは、
その子の目が黒いかどうかではない。
なぜ、その子はそこまでして、あなた自身に扉を開けさせようとしているのか。
もし、
本当に許可が必要なのだとしたら。
扉の向こうにいるものにとって、
あなたが言う、
たった一言の「どうぞ」が――
鍵を開ける行為そのものなのかもしれない。

……これ知ったあとに夜中インターホン鳴るの嫌すぎるんだけど。

扉を開けずに対応できる時代でよかったですね。

そういう問題かな……。

少なくとも今夜は、相手を確認する前に「どうぞ」とは言わない方がよさそうです。

今夜の記録はここまでです。

また次の資料でお会いしましょう。
出典
・Brian Bethelによるブラック・アイド・キッズの体験談、および後年の関連記録
・Black-Eyed Children / Black-Eyed Kidsとして流布している現代都市伝説に関する公開資料
※ブラック・アイド・チルドレンの実在を裏付ける科学的・公的な証拠は確認されていません。本記事では、都市伝説として流布している内容と、その特徴から考えられる解釈を分けて紹介しています。
おまけ
ブラック・アイド・チルドレンの話で興味深いのは、「黒い目」という分かりやすい異常より、「許可を求める」という行動の方が後から怖くなることです。
怪異が玄関の外にいる。
それだけなら、まだ境界はこちら側を守っている。
しかし、
もしその境界を壊す方法が、
怪異の力ではなく、
内側にいる人間の同意だったとしたら。
この話を知ったあとでは、
夜中の「入れてください」という言葉が、
少し違って聞こえるかもしれません。



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