
ようこそ、深夜資料室へ。
人類は昔から終わりを恐れてきました。
隕石。
疫病。
戦争。
核兵器。
世界を滅ぼす方法はいくらでもあります。
だからこそ、人類は備えます。
食料を保存する。
種子を保存する。
知識を保存する。
では。
人類そのものを保存することはできるのでしょうか。
今夜の資料はSCP-2000。
人類が滅んだ後のために作られた装置の記録です。

そしてこの記録を読み終えた時、私たちはある疑問に辿り着きます。
私たちは何回滅んだのでしょうか。
SCP概要

SCP-2000はイエローストーン国立公園地下に存在する巨大施設です。
オブジェクトクラスはThaumiel。
財団に利益をもたらす異常存在へ与えられる分類です。
その目的は極めて明確。

人類文明の再建です。

再建?
つまり避難所みたいな?

少し違います。
SCP-2000は人類を守る施設ではありません。

人類が滅んだ後に、
人類を作り直す施設です。

施設内部には、
人類のDNA
歴史資料
教育資料
技術資料
文化資料
などが保管されています。
さらに人間を製造する設備まで備えています。

ちょっと待って。
人間を製造するって何?

そのままの意味です。

SCP-2000は人間を複製し、
文明そのものを復元するための装置なのです。
人類をやり直す機械

もしKクラス終末シナリオが発生した場合。
つまり人類文明が崩壊した場合。
SCP-2000は起動します。

保存されたDNAから人類を複製する。
知識を与える。
社会を再建する。
都市を復元する。
文明を復活させる。

すごくない?
人類勝ちじゃん。

そう見えます。

実際、SCP-2000は財団世界における最後の保険です。
どれほど大きな災害が起きても。
どれほど悲惨な終末が訪れても。
人類はやり直せる。
そう考えれば希望の施設です。

少なくとも最初は。
やり直された歴史

しかし読み進めると、少しずつ違和感が現れます。

SCP-2000は人類を復元するだけではありません。
歴史も復元します。
文化も復元します。
社会も復元します。
さらに。
それらが一度滅んだ事実まで隠蔽します。

年輪。
地質記録。
天文学的観測記録。
歴史資料。

人類が滅亡した痕跡を消し、
世界が連続して続いてきたように見せるのです。

待って。

それってつまり……

ええ。
再建された人類は、
自分たちが再建されたことを知りません。
世界は何事もなかったかのように続いていきます。
少なくとも二度、世界は終わっている

ここからが本題です。

SCP-2000には過去の起動記録が存在します。
つまり。
この施設は少なくとも一度は使用されたことがある。
いえ。

原典の記録を見る限り、
少なくとも二度は起動しています。

え?

じゃあ人類って……

少なくとも二度は滅亡を経験した可能性があります。

問題はここからです。
その記録は不完全でした。
欠損しています。
改ざんされている可能性もあります。
そして建設記録すら曖昧です。
財団ですら、
SCP-2000がいつ作られたのか完全には把握していません。

私たちが確認できるのは、
「少なくとも二度」
それだけです。
間違った人類

さらに不穏な記録があります。

ある事故によって、
SCP-2000は1000万体以上の異常な人間を生成しました。

通常の人類とは異なる身体構造。
異なる内臓。
異なる脳構造。

彼らは数週間後に全滅します。

待って。
人類再生装置って失敗するの?

ええ。

それも盛大に。

SCP-2000は万能ではありません。
人類をやり直せます。
しかし。

正しくやり直せる保証はないのです。
古い死体

そして原典でも特に印象的な記録があります。

施設内部から、
数百年前のものと思われる人骨が発見されたのです。

その近くには奇妙なメモが残されていました。
なぜ我々はこれを作らなければならなかった?
いつ作った?
どれだけ長く続けてきた?
我々はそれを知っているのか?

……嫌だなぁ。

ええ。

なぜならこの問いに、
誰も答えられないからです。
私たちは本物の人類なのか

SCP-2000は恐ろしい施設です。
ですが。
私が恐ろしいと感じたのは人類再生機能ではありません。

その後です。

もし人類が滅亡したとして。
SCP-2000が起動したとして。
人類が再建されたとして。

その世界で暮らす人々は、
自分たちが再建された人類だと気付けるのでしょうか。

気付けない気がする。

私もそう思います。
記憶はある。
文化もある。
歴史もある。
社会も続いている。
何も変わらない。

では。
それは本物の人類と何が違うのでしょう。

原典は答えません。
今の人類がコピーだとも言いません。
しかし。

そうではないと証明する方法も示していません。
だからこそ、この作品は不気味なのです。
まとめ

SCP-2000は人類を救うための装置です。

しかし同時に、
人類が滅亡した事実そのものを消してしまう装置でもあります。

私たちは何回滅んだのでしょうか。

二回でしょうか。
十回でしょうか。
あるいはもっと多いのでしょうか。

分かりません。
ですが。
もし今の世界が再建された世界だったとしても、
私たちはそれに気付けないでしょう。

そして、その違いに意味があるのかも分かりません。

人類は終わりを恐れます。

ですがSCP-2000が突きつけるのは、
終わったことすら分からなくなる恐怖なのかもしれません。

今夜の記録はここまでです。
また次の資料でお会いしましょう。
出典
作品名:SCP-2000 – Deus Ex Machina
作者:HammerMaiden
原典:https://scp-wiki.wikidot.com/scp-2000
ライセンス
SCP-2000 “Deus Ex Machina” by HammerMaiden is licensed under the Creative Commons Attribution-ShareAlike 3.0 License.
SCP Foundation is licensed under CC BY-SA 3.0.
おまけ

司書、これが10回目の世界だったらどうする?

11回目に期待しましょう。

嫌な希望だな。



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