
ようこそ、深夜資料室へ。
山には入らない方がいい。
そう言われる場所には、
大抵何か理由があります。
危険な崖。
獣の縄張り。
あるいは、
説明のつかない何か。
今夜の記録は、
一人の父親が後悔し続ける話です。
もしあの日。
あの山へ入らなければ。
この記録は残らなかったのかもしれません。
怪異記録概要

ヤマノケって有名なやつだよな。

2007年に投稿された洒落怖の名作です。[/s11]
そうめんテン……ソウ……メツ……のやつ。
司書ええ。ただ、本当に怖いのはその後かもしれません。[/s15]
ドライブ
休日。
父親は幼い娘を連れて車を走らせていた。
特別な日ではない。
どこにでもある親子の休日だった。
しばらく走った後、
父親は一本の脇道を見つける。
細い道。
人気のない山道。
少しだけ覗いてみよう。
そんな軽い気持ちだった。
だが娘は違った。
「やだ。」
そう言った。
父親は笑う。
怖がっているだけだと思った。
そして車を進める。
そうめん嫌な予感しかしない。
司書後から思えば、引き返す機会はいくらでもありました。
山へ入る
山道は思ったより長かった。
舗装も悪い。
周囲には誰もいない。
娘はずっと黙っている。
やがて父親も不安になる。
そろそろ戻ろう。
そう思った時だった。
車が止まる。
エンジンがかからない。
携帯も圏外。
周囲に人の気配もない。
日も暮れ始めていた。
父親は焦る。
だがどうすることもできない。
結局。
二人は車の中で夜を明かすことになった。
テン……ソウ……メツ……
深夜。
父親は妙な音で目を覚ます。
テン……
ソウ……
メツ……
誰かの声のようにも聞こえる。
風ではない。
動物でもない。
テン……
ソウ……
メツ……
近い。
外だ。
父親は窓の外を見る。
何かがいた。
白い。
異様に白い。
そして人のようで、
人ではなかった。
頭がない。
胸の辺りに顔がある。
片足で跳ねるように近付いてくる。
テン……
ソウ……
メツ……

いやいやいや。

帰れ帰れ帰れ。

残念ながら、もう帰れません。
助かったと思った
朝になった。
山の中は静かだった。
あの声も聞こえない。
あの怪物の姿もない。
父親は車を降りる。
娘も無事だった。
助かった。
そう思った。
やがて近くのドライブインへ辿り着く。
店の婆さんが二人を見る。
そして顔色を変えた。
父親は理由が分からない。
ただ、
婆さんは明らかに何かを恐れていた。

嫌な予感しかしない。

この時点で、異変には気付かれていました。[/s15]
はいれた
タクシーを待つ間。
娘は眠っていた。
父親は少し安心していた。
もう山からは出た。
後は帰るだけ。
そう思っていた。
その時。
娘が目を開ける。
ゆっくりと。
そして。
笑った。
父親を見る。
そして、
ぶつぶつと呟き始める。
「はいれたはいれたはいれたはいれたはいれた……」
父親は意味が分からない。
だが。
娘は止まらない。
「はいれたはいれたはいれたはいれた……」
その声は娘のものだった。
だが。
その笑い方は娘のものではなかった。
そうめん終わってねぇじゃん……。
司書ええ。

ここからが本題です。
住職
異変は続いた。
娘の様子がおかしい。
表情。
言葉。
仕草。
何かが違う。
父親は紹介された住職の元を訪れる。
住職は娘を見る。
そして顔色を変えた。
父親へ怒鳴る。
「どこへ行った!」
「何をした!」
父親は初めて理解する。
自分は、
取り返しのつかないことをしたのかもしれない。

ここキツいな……。

娘は何も悪くありませんからね。
四十九日
住職は言う。
まだ間に合うかもしれない。
だが時間はない。
四十九日。
それが一つの境界だという。
娘は住職の元へ預けられる。
父親は会うことも出来ない。
ただ待つ。
祈る。
それしか出来なかった。
数日後。
父親は娘の様子を見に行く。
少しでも良くなっているかもしれない。
そんな期待があった。
だが。
娘は父親を見る。
そして。
ただニタニタと笑っていた。
父親は言葉を失う。
日に日に。
後悔だけが大きくなる。
終わっていなかった
原典はここで終わらない。
娘はまだ戻っていない。
住職の元にいる。
父親は会えていない。
そして投稿時点でも、
結末は分からないままだった。
助かったのか。
助からなかったのか。
誰にも分からない。
分かるのは一つだけ。
娘は最初から嫌がっていた。
それでも父親は山へ入った。
そして今も、
その結果は終わっていない。
なぜヤマノケは有名になったのか
ヤマノケは怪物の怪談として有名です。
頭のない異様な姿。
そして、
「テン……ソウ……メツ……」
という不気味な声。
ですが。
本当に怖いのはそこではありません。
本当に怖いのは何だったのか

結局さ。

はい。

娘は何も悪くなかったんだよな。

ええ。
父親は軽い気持ちだった。
少し寄り道をしただけだった。
ですが。
代償を払ったのは娘でした。
だからこの怪談は後味が悪い。
だから今も語り継がれている。
ヤマノケが恐ろしいのは、
怪物そのものではなく。
後悔が消えないことなのかもしれません。
まとめ
ヤマノケは怪物の怪談です。
ですが本当に印象に残るのは、
怪物の姿ではありません。
一人の父親の後悔です。
引き返せたはずの道。
聞くべきだった言葉。
守るべきだった娘。
その全てを失ったかもしれないからこそ、
この怪談は今も語り継がれているのでしょう。

今夜の記録はここまでです。
また次の資料でお会いしましょう。
出典
作品名:ヤマノケ
初出:
2ちゃんねる オカルト板
「死ぬ程洒落にならない怖い話を集めてみない?」投稿作品
ライセンス
本記事は原典怪談の内容を引用・紹介する解説記事です。著作権は原著作者に帰属します。
おまけ

娘は何も悪くなかったのにな。

ええ。

だからこそ、後味が悪いのでしょう。



コメント