
ようこそ、深夜資料室へ。
怖い話には二種類あります。
読んでいる間だけ怖い話。
そして。
読み終わった後も残り続ける話です。
本を閉じても。
画面を消しても。
ふとした瞬間に思い出してしまう。
何年経っても忘れられない。
そんな記録があります。
今夜は、
深夜資料室に収蔵された資料の中から、
特に忘れられない五つの記録をご紹介しましょう。

怖かった作品ってことか?

必ずしもそうではありません。
恐怖。
絶望。
切なさ。
苦しさ。
理由は違っても、
読後に心へ残り続ける作品達です。
SCP-2718――永遠の一秒

人は死を恐れます。
ですが同時に、
どこかで信じています。
死ねば終わる。
苦しみも終わる。
意識も消える。
だからこそ。
死は恐ろしくもあり、
時には救いとして語られるのです。

まぁ普通はそう考えるよな。

SCP-2718は、
その前提を壊しました。
ある財団高官が死亡する。
そして。
蘇生される。
それだけなら、
異常な話ではありません。
財団には死者蘇生の記録も存在します。
ですが。
彼は蘇生後、
死後に見たものを語り始めました。
最初は誰も信じませんでした。
死の間際の幻覚。
脳の誤作動。
そう考えたのです。
ところが。
その証言を読んだ人々は、
次々と変わっていきます。
取り乱す者。
怯える者。
そして。
その情報そのものを封印しようとする者。

財団が怪物じゃなくて、
情報を隠そうとしたのか。

ええ。
彼らは怪物ではなく、
知識を恐れたのです。
彼が語った内容。
それは。
死は終わりではないということ。
意識は残る。
時間も流れる。
永遠に。
どこまでも。
そして。
彼は生きている人々へ、
ただ一言だけ訴えました。
『死ぬな。』

その一言だけで、
なんとなく嫌な予感がするな。

だから2718は忘れられません。
怖いのは怪物ではない。
死後の世界ですらない。
一度知ってしまったら、
もう知らなかった頃には戻れないこと。
それこそが、
2718が読者へ残す恐怖です。

こういうの嫌なんだよ。
今夜寝る前に絶対思い出す。

それが2718です。
読み終わった後から、
少しずつ効いてくるのです。

より詳しい記録は、
SCP-2718個別資料へ収蔵しています。

SCP-3001――最後まで残った光

もし。
世界からたった一人、
取り残されたらどうなるでしょう。
食べ物もない。
助けも来ない。
帰る方法も分からない。
SCP-3001は、
そんな記録です。
ある実験中。
研究員ロバート・スクラントンは事故に巻き込まれます。
目を覚ました時。
そこには何もありませんでした。
人もいない。
建物もない。
聞こえる音もない。
ただ。
壊れた装置だけが残っていたのです。

助けは呼べないのか?

呼べません。
ですが。
その装置だけは残り続けました。
元の世界との、
最後の繋がりとして。
ロバートは生き延びます。
諦めなかったから。
帰れると信じていたから。
そして。
記録を残し始めます。
誰かが見つけるかもしれない。
帰れるかもしれない。
その希望だけを支えに。
文章を書く。
観測を続ける。
存在した証を残そうとする。
ですが。
その記録を読んでいると、
少しずつ変化が見えてきます。
冷静だった文章。
論理的だった文章。
それが徐々に崩れていく。
人間が壊れていく過程が、
そのまま残されているのです。

これ怖いっていうより、
読んでるのが辛くなるな。

だから忘れられないのです。
SCP-3001を思い出す時。
多くの読者は、
異常空間そのものではなく。
一人の研究者と、
最後まで残り続けた光を思い出します。
希望だったのか。
絶望だったのか。
その答えは人によって違うでしょう。
だから3001は忘れられないのです。

怪物より、
一人の人間の方が残るんだな。

それが3001が長く愛される理由なのでしょう。
より詳しい記録は、
SCP-3001個別資料へ収蔵しています。

SCP-1342――人類を愛した文明

人類は宇宙へ向けて、
何度もメッセージを送りました。
遠い誰かが見つけてくれるかもしれない。
いつか出会えるかもしれない。
そんな願いを込めて。
SCP-1342は、
その願いが本当に届いた記録です。

それってボイジャーの話か。

ええ。
遠い未来。
ある異星文明が、
人類の残した記録を発見します。
音楽。
言葉。
歴史。
文化。
彼らは人類を知りました。
そして。
人類を好きになったのです。

いい話じゃん。

最初はそう思います。
その文明は、
人類について研究します。
人類の言葉を学ぶ。
人類の音楽を保存する。
人類の文化を語り継ぐ。
まだ会ったこともない相手に、
憧れ続けたのです。
やがて彼らは、
宇宙を旅する技術を手に入れます。
そして。
人類を探し始める。
何世代もの時間をかけて。
ただ一つの願いのために。
人類に会いたい。

なんかもう、
この時点で嫌な予感しかしないな。

読者の多くも同じです。
なぜなら。
この物語は、
『人類を愛した文明の記録』
として残されているからです。
そして。
SCP-1342が忘れられない理由は、
最後まで彼らが人類を信じ続けたことにあります。

信じ続けたって言い方が怖いな。
何かあったんだろ。

ええ。
ですが。
その結末こそ、
個別資料で知っていただきたいのです。
多くのSCPは恐怖が残ります。
ですが1342は違う。
残るのは喪失感です。
もし彼らが人類に出会わなければ。
もし憧れのままで終わっていたなら。
そんなことを考えてしまう。
だから。
SCP-1342は忘れられません。

怖い話より、
こういう話の方が後を引くんだよな。

だから今も語り継がれているのでしょう。
より詳しい記録は、
SCP-1342個別資料へ収蔵しています。

SCP-7179――終わりを願う物語

人は死を恐れます。
だからこそ。
永遠の命を夢見ることがあります。
病気にならない体。
老いない肉体。
終わらない人生。
もしそれが手に入るなら。
多くの人は望むかもしれません。

不老不死ってやつだな。
昔からみんな憧れてる。

SCP-7179は、
その願いの先を描いた記録です。
ある人物が死を迎える。
ですが。
終わらない。
意識は続く。
時間も続く。
死んだはずなのに、
終わりだけが来ない。
最初は希望があります。
いつか終わるかもしれない。
誰かが助けてくれるかもしれない。
ですが。
時間は残酷です。
何年。
何十年。
何百年。
想像もできない時間が流れていく。

2718とは違うな。
死が怖いんじゃない。
終われないのが怖い。

その通りです。
7179を読んだ後、
多くの読者は考えます。
死は本当に恐ろしいのか。
終わりがあることは、
本当に不幸なのか。
と。
やがて。
この作品は恐怖譚ではなくなります。
終わりを求める物語になるのです。

永遠に生きたいって願いが、
こんなに怖く見える話も珍しいな。

だから7179は忘れられません。
死を恐れる物語ではなく。
終わりを願う物語だからです。

より詳しい記録は、
SCP-7179個別資料へ収蔵しています。

SCP-8980――最後まで、自分を責め続けた研究員

ここまで紹介した作品には、
異常現象がありました。
常識では説明できない出来事がありました。
ですが。
次の記録は少し違います。
忘れられない理由が、
あまりにも現実に近いのです。
リリアン・マーリー。
財団で働いていた研究員。
優秀な職員でした。
ですが。
ある日から異常存在として扱われるようになります。
事故が起きる。
機械が壊れる。
トラブルが起きる。
そして。
その原因は彼女だと考えられました。

最初に聞くと、
普通の収容記録だな。

ええ。
最初はそう見えます。
ですが。
記録を読み進めると、
少しずつ違和感が積み重なっていく。
彼女は謝る。
萎縮する。
自信を失う。
そして。
周囲はそれを異常性の一部として扱う。
ある時。
彼女はカレンダーが欲しいと頼みます。
今日が何日なのか。
それを知りたかっただけでした。
担当者は約束します。
用意すると。
ですが。
その約束は守られません。
そして不思議なことに。
謝るのはいつもリリアンでした。

それは異常現象じゃない。
ただ苦しいだけだ。

その感覚こそが重要です。
SCP-8980には、
派手な怪物はいません。
世界も滅びません。
それなのに。
多くの読者は忘れられなくなる。
なぜなら。
そこに描かれているのは、
現実にも存在する苦しさだからです。

怖いっていうより、
胸が痛くなるな。

だからこそ忘れられないのでしょう。
SCP-8980を思い出す時。
多くの読者は異常現象ではなく、
届かなかったカレンダーを思い出します。
そして。
本当に異常だったのは誰だったのかと。
考えてしまうのです。

より詳しい記録は、
SCP-8980個別資料へ収蔵しています。

まとめ

恐怖。
孤独。
切なさ。
絶望。
苦しさ。
今夜ご紹介した五つの記録は、
どれも違う感情を残します。
ですが。
共通していることがあります。
それは。
読み終わった後も、
読者の中に残り続けることです。
SCPには、
派手な怪物が登場する作品もあります。
世界が滅ぶ作品もあります。
ですが。
本当に忘れられない作品は、
もっと静かです。
ふとした瞬間に思い出す。
夜眠る前に思い出す。
何年後かに、
突然思い出す。
そして。
もう一度読み返したくなる。

怖かったから残るんじゃないんだな。
その時の気持ちごと残るんだ。

ええ。
2718を思い出せば恐怖が蘇る。
3001を思い出せば孤独が蘇る。
1342を思い出せば切なさが蘇る。
7179を思い出せば絶望が蘇る。
8980を思い出せば苦しさが蘇る。

それってさ。
忘れられないんじゃなくて、
忘れさせてもらえないんじゃないか。

そうかもしれません。
だから今も、
語り継がれているのでしょう。

もし気になる記録があれば、
ぜひ個別資料も読んでみてください。
今夜ご紹介したのは、
あくまで入口に過ぎません。
その先には、
さらに深い記録が眠っています。

今夜の記録はここまでです。
また次の資料でお会いしましょう。
出典
SCP-2718
著者:Dr Gears
原文:SCP Foundation
URL:https://scp-wiki.wikidot.com/scp-2718
SCP-3001
著者:OZ Ouroboros
原文:SCP Foundation
URL:https://scp-wiki.wikidot.com/scp-3001
SCP-1342
著者:A Random Day
原文:SCP Foundation
URL:https://scp-wiki.wikidot.com/scp-1342
SCP-7179
著者:Placeholder McD
原文:SCP Foundation
URL:https://scp-wiki.wikidot.com/scp-7179
SCP-8980
著者:Placeholder McD
原文:SCP Foundation
URL:https://scp-wiki.wikidot.com/scp-8980
ライセンス
本記事は、SCP Foundation掲載作品
「SCP-2718」
「SCP-3001」
「SCP-1342」
「SCP-7179」
「SCP-8980」
をもとにした解説記事です。
原文はCC BY-SA 4.0の下に公開されています。
本記事も同ライセンスに従います。
おまけ

2718も。
3001も。
1342も。
7179も。
8980も。
全部違う話なのに、
なんでこんなに後を引くんだろうな。

忘れられないからではありません。
心のどこかに、
残ってしまったからです。



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