SCP-055――なぜ財団はそれが何かを記録できないのか

SCP資料
司書
司書

ようこそ、深夜資料室へ。

記録とは、不確かなものを残すためにあります。

出来事を忘れないために。

失われた知識を未来へ伝えるために。

そしてSCP財団とは、まさにそのための組織です。

世界中の異常存在を発見し、記録し、収容する。

しかし今夜の資料は少し違います。

財団が収容しているにもかかわらず、

財団自身が記録できない存在。

SCP-055。

その正体を知る者はいません。

いえ、正確には――

知ることはできるのに、覚えていられないのです。

SCP概要

そうめん
そうめん

記録できないSCP?

財団って記録のプロ集団じゃなかったっけ。

司書
司書

その通りです。

SCP-055はKeterクラスに分類されています。

しかし奇妙なことに、誰もSCP-055の正体を説明できません。

そうめん
そうめん

未確認生物みたいな話?

司書
司書

いいえ。

むしろ逆です。

SCP-055は観察できます。

写真も撮れます。

映像も残せます。

研究もできます。

そうめん
そうめん

じゃあ何が問題なの?

司書
司書

観察を終えた瞬間から、

その情報が失われるのです。

そうめん
そうめん

……は?

司書
司書

職員は収容室へ入り、

SCP-055を確認します。

しかし部屋を出る頃には、

何を見たのか思い出せなくなっています。

そうめん
そうめん

怖いというか意味が分からない。

司書
司書

その感想こそがSCP-055の本質に近いのかもしれません。

「何かがいる」

財団の職員たちは時折気付きます。

ある日、資料を整理していた研究員が首を傾げる。

SCP-001。

SCP-173。

SCP-682。

それぞれのファイルには説明がある。

収容方法がある。

危険性がある。

だが、一つだけ様子がおかしい。

SCP-055。

番号は存在する。

収容手順も存在する。

警備計画も存在する。

しかし、

肝心の「何を収容しているのか」が書かれていない。

研究員は違和感を覚える。

収容している以上、何かがいるはずだ。

ならば確認しよう。

そう考えて収容室へ向かう。

そして帰ってくる。

数分後。

彼は再び首を傾げる。

「待てよ……SCP-055って何だ?」

なぜなら、

もう覚えていないからです。

なぜこれほど恐ろしいのか

そうめん
そうめん

これって透明な怪物みたいなもの?

司書
司書

原典では明確に否定されています。

SCP-055は不可視ではありません。

存在しないわけでもありません。

そこにあります。

ただ、

認識した事実を保持できない。

そうめん
そうめん

だったら危険かどうかも分からないじゃん。

司書
司書

その通りです。

例えば怪物なら姿が分かる。

危険な場所なら近付かなければいい。

しかしSCP-055の場合、

危険かどうかさえ分からない。

もしかしたら無害かもしれない。

もしかしたら世界を滅ぼせる存在かもしれない。

ですが誰も判断できません。

そうめん
そうめん

答えがないのが怖いな。

司書
司書

ええ。

未知とは通常、

いつか解明できるものです。

しかしSCP-055は違う。

解明しようとした事実そのものが失われる。

そこに恐怖があります。

なぜSCP-055は伝説になったのか

司書
司書

SCP-055は長大な物語ではありません。

派手な戦闘もありません。

悲劇的な結末もありません。

それでもSCP界で最も有名な作品の一つです。

そうめん
そうめん

なんで?

司書
司書

読者自身が異常性を体験するからです。

普通のSCP記事は、

「何が起きるか」を読む物語です。

しかし055は、

「何が起きているのか分からない」

という感覚そのものを味わわせます。

読者は記事を読み終えても、

結局SCP-055が何なのか説明できません。

そうめん
そうめん

確かに。

読んだのに分からん。

司書
司書

だからこそ記憶に残るのです。

多くの怪物は姿を覚えています。

多くの物語は結末を覚えています。

しかし055は、

理解できなかった感覚そのものが記憶に残る。

それが他のSCPにはない魅力でした。

「丸くはない」

そうめん
そうめん

でも何か一つくらい分かってることあるんでしょ?

司書
司書

あります。

極めて有名な記述です。

研究の結果、

職員たちはSCP-055が何であるかは覚えられませんでした。

しかし、

何でないかなら覚えていられる場合がありました。

その結果判明した情報の一つ。

それが、

「丸くはない」

という事実です。

そうめん
そうめん

いや意味分からん。

司書
司書

ええ。

意味は分かりません。

しかしそれが原典において数少ない確定情報です。

世界中の異常存在を収容する財団が、

長年の研究の末に得た成果。

それが、

「丸くはない」

だったのです。

そうめん
そうめん

なんか笑えるのに怖いな。

司書
司書

おそらく作者も、その奇妙さを狙っていたのでしょう。

まとめ

司書
司書

SCP-055は怪物の姿で恐怖を与える作品ではありません。

描かれているのは、

「知らないこと」ではなく、
「知っているはずなのに保持できないこと」への恐怖です。

財団はそれを収容しています。

しかし誰も説明できません。

研究も行われています。

しかし成果は残りません。

それでも確かに、

そこには何かが存在しています。

だからこそSCP-055は、

SCP史の中でも特に異質な作品として語り継がれているのでしょう。

もしあなたが今夜、この資料の内容を忘れてしまったとしても。

きっと一つだけは覚えているはずです。

「丸くはない」。

司書
司書

今夜の記録はここまでです。

また次の資料でお会いしましょう。

出典

作品名:SCP-055 – [unknown]
作者:qntm
原典:https://scp-wiki.wikidot.com/scp-055

ライセンス

SCP-055 – [unknown] by qntm is licensed under the Creative Commons Attribution-ShareAlike 3.0 License.

SCP Foundation:https://scp-wiki.wikidot.com/
ライセンス:CC BY-SA 3.0

そうめん
そうめん

結局それ何の情報なんだよ。

司書
司書

少なくとも丸くはありません。

そうめん
そうめん

だから何なんだよ。

コメント