
ようこそ、深夜資料室へ。
記録とは、不確かなものを残すためにあります。
出来事を忘れないために。
失われた知識を未来へ伝えるために。
そしてSCP財団とは、まさにそのための組織です。
世界中の異常存在を発見し、記録し、収容する。
しかし今夜の資料は少し違います。
財団が収容しているにもかかわらず、
財団自身が記録できない存在。
SCP-055。
その正体を知る者はいません。
いえ、正確には――
知ることはできるのに、覚えていられないのです。
SCP概要

記録できないSCP?
財団って記録のプロ集団じゃなかったっけ。

その通りです。
SCP-055はKeterクラスに分類されています。
しかし奇妙なことに、誰もSCP-055の正体を説明できません。

未確認生物みたいな話?

いいえ。
むしろ逆です。
SCP-055は観察できます。
写真も撮れます。
映像も残せます。
研究もできます。

じゃあ何が問題なの?

観察を終えた瞬間から、
その情報が失われるのです。

……は?

職員は収容室へ入り、
SCP-055を確認します。
しかし部屋を出る頃には、
何を見たのか思い出せなくなっています。

怖いというか意味が分からない。

その感想こそがSCP-055の本質に近いのかもしれません。
「何かがいる」
財団の職員たちは時折気付きます。
ある日、資料を整理していた研究員が首を傾げる。
SCP-001。
SCP-173。
SCP-682。
それぞれのファイルには説明がある。
収容方法がある。
危険性がある。
だが、一つだけ様子がおかしい。
SCP-055。
番号は存在する。
収容手順も存在する。
警備計画も存在する。
しかし、
肝心の「何を収容しているのか」が書かれていない。
研究員は違和感を覚える。
収容している以上、何かがいるはずだ。
ならば確認しよう。
そう考えて収容室へ向かう。
そして帰ってくる。
数分後。
彼は再び首を傾げる。
「待てよ……SCP-055って何だ?」
なぜなら、
もう覚えていないからです。
なぜこれほど恐ろしいのか

これって透明な怪物みたいなもの?

原典では明確に否定されています。
SCP-055は不可視ではありません。
存在しないわけでもありません。
そこにあります。
ただ、
認識した事実を保持できない。

だったら危険かどうかも分からないじゃん。

その通りです。
例えば怪物なら姿が分かる。
危険な場所なら近付かなければいい。
しかしSCP-055の場合、
危険かどうかさえ分からない。
もしかしたら無害かもしれない。
もしかしたら世界を滅ぼせる存在かもしれない。
ですが誰も判断できません。

答えがないのが怖いな。

ええ。
未知とは通常、
いつか解明できるものです。
しかしSCP-055は違う。
解明しようとした事実そのものが失われる。
そこに恐怖があります。
なぜSCP-055は伝説になったのか

SCP-055は長大な物語ではありません。
派手な戦闘もありません。
悲劇的な結末もありません。
それでもSCP界で最も有名な作品の一つです。

なんで?

読者自身が異常性を体験するからです。
普通のSCP記事は、
「何が起きるか」を読む物語です。
しかし055は、
「何が起きているのか分からない」
という感覚そのものを味わわせます。
読者は記事を読み終えても、
結局SCP-055が何なのか説明できません。

確かに。
読んだのに分からん。

だからこそ記憶に残るのです。
多くの怪物は姿を覚えています。
多くの物語は結末を覚えています。
しかし055は、
理解できなかった感覚そのものが記憶に残る。
それが他のSCPにはない魅力でした。
「丸くはない」

でも何か一つくらい分かってることあるんでしょ?

あります。
極めて有名な記述です。
研究の結果、
職員たちはSCP-055が何であるかは覚えられませんでした。
しかし、
何でないかなら覚えていられる場合がありました。
その結果判明した情報の一つ。
それが、
「丸くはない」
という事実です。

いや意味分からん。

ええ。
意味は分かりません。
しかしそれが原典において数少ない確定情報です。
世界中の異常存在を収容する財団が、
長年の研究の末に得た成果。
それが、
「丸くはない」
だったのです。

なんか笑えるのに怖いな。

おそらく作者も、その奇妙さを狙っていたのでしょう。
まとめ

SCP-055は怪物の姿で恐怖を与える作品ではありません。
描かれているのは、
「知らないこと」ではなく、
「知っているはずなのに保持できないこと」への恐怖です。
財団はそれを収容しています。
しかし誰も説明できません。
研究も行われています。
しかし成果は残りません。
それでも確かに、
そこには何かが存在しています。
だからこそSCP-055は、
SCP史の中でも特に異質な作品として語り継がれているのでしょう。
もしあなたが今夜、この資料の内容を忘れてしまったとしても。
きっと一つだけは覚えているはずです。
「丸くはない」。

今夜の記録はここまでです。
また次の資料でお会いしましょう。
出典
作品名:SCP-055 – [unknown]
作者:qntm
原典:https://scp-wiki.wikidot.com/scp-055
ライセンス
SCP-055 – [unknown] by qntm is licensed under the Creative Commons Attribution-ShareAlike 3.0 License.
SCP Foundation:https://scp-wiki.wikidot.com/
ライセンス:CC BY-SA 3.0

結局それ何の情報なんだよ。

少なくとも丸くはありません。

だから何なんだよ。



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