怪異記録概要

ようこそ、深夜資料室へ。
今夜の資料は、どこの家にもあるものです。
毎朝見る人もいるでしょう。
毎日触れている人もいるでしょう。
ですが。
もしその鏡が少しだけ違って見えたら。
今夜は「鏡」という怪異について記録を辿ってみましょう。

鏡って怪異なのか?
口裂け女とか八尺様みたいに、
何かが出てくる話じゃないだろ?

ええ。
ですが不思議なことに、
世界中には鏡を恐れる伝承が残っています。

言われてみれば、
合わせ鏡とか聞いたことあるな。
なぜ鏡は特別なものだったのか

現代では鏡はありふれています。
ですが昔は違いました。
鏡は非常に貴重なものであり、
自分の顔を鮮明に映せる数少ない道具だったのです。

今ならスマホのインカメでも見られるけどな。

そうです。
だから現代人には想像しづらい。
昔の人にとって鏡は、
**「自分が映る不思議な板」**でした。

言われてみると変だな。
俺がいるのに、
俺じゃない俺がいる。

そのため世界中で、
鏡は魂や霊と結び付けられるようになります。
日本では三種の神器の一つに鏡がありますし、
海外でも魔術や占いの道具として扱われました。
ただ顔を映すだけの道具ではなかったのです。
死者と鏡

実は世界には、
死者が出た家の鏡を隠す風習があります。

え?
なんで鏡だけ?

理由は様々です。
魂が鏡へ閉じ込められる。
死者の魂が鏡に映る。
生者が死者に引き寄せられる。
そう考えられていました。

日本だけじゃないのか?

ええ。
ヨーロッパにも。
ユダヤ教圏にも。
似た風習が存在します。

それ面白いな。
離れた場所なのに同じ発想なんだ。

文化は違っても、
人は昔から鏡の向こう側に何かを感じていたのかもしれません。
合わせ鏡

鏡の怪談で最も有名なのは、
おそらく合わせ鏡でしょう。

夜にやるなってやつだな。

ええ。
二枚の鏡を向かい合わせる。
すると鏡の中に、
無限に続く鏡像が現れます。

あれだけでも十分不気味だな。

地域によっては、
十三人目が現れる。
未来の自分が映る。
幽霊が見える。
異界へ繋がる。
様々な伝承があります。

誰が最初に試したんだろうな。

その好奇心が、
怪談を生み続けているのでしょう。
鏡の中の自分は本当に自分なのか

ここからは少し奇妙な話です。

まだ怖くなるのかよ。

鏡の怪談には、
「鏡の自分だけが動く」
というものがあります。

定番だな。

笑っていないのに笑う。
目を逸らしていないのに逸らす。
鏡の中だけが違う行動を取る。
世界中で語られている怪談です。

絶対見たくないな。

ですが。
実は現実にも少し似た話があります。
本当に行われた鏡の実験

ある研究では、
暗い部屋で自分の顔を鏡越しに見続けてもらいました。
ただそれだけです。

簡単な実験だな。

ですが結果は予想外でした。
参加者の多くが、
老人に見えた。
知らない人物に見えた。
怪物に見えた。
中には亡くなった家族に見えたと語る人もいました。

それもう怪談じゃねぇか。

もちろん超常現象ではありません。
脳の認識による心理現象です。
ですが。
実際に体験した人々の感想は、
怪談とほとんど変わりませんでした。

つまり。
鏡の中の自分が別人に見えるってのは、
本当に起きるのか。

ええ。
少なくとも人間の脳は、
そう感じることがあるようです。
なぜ人は鏡を怖がるのか

結局なんで怖いんだろうな。
鏡って。

幽霊が映るからではないのかもしれません。

というと?

鏡には、
自分自身が映ります。
毎日見ているはずなのに、
完全には理解できない自分自身が。

知らない誰かじゃなくて、
自分だから怖いのか。

鏡の怪談が世界中に存在するのも、
そのためかもしれません。
鏡は別世界への入り口ではなく、
人間自身の不安を映しているのかもしれません。
まとめ

合わせ鏡。
死者と鏡。
鏡の中のもう一人。
そして心理実験。
鏡はただの道具でありながら、
古くから怪異と結び付けられてきました。

今日帰ったら風呂場の鏡見たくなくなったんだが。

ですが安心してください。
今夜のところは、
まだこちら側に映っているようです。
今夜の記録はここまでです。
また次の資料でお会いしましょう。
出典
・合わせ鏡に関する民間伝承・都市伝説
・鏡と死者に関する各国の民俗伝承
・Giovanni B. Caputo「Strange-face-in-the-mirror illusion」(2010)
おまけ

なぁ司書。
今日の話聞いてから鏡見るの嫌なんだけど。

安心してください。
鏡の中のそうめんさんは、
今のところ動いていません。

今のところって言ったよな?

……おや。

おいやめろ。振り向きたくなるだろ。



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